Monday, February 8, 2021

コラム:テスラのビットコイン投資、会計規則の矛盾浮き彫りに - ロイター (Reuters Japan)

misaltag.blogspot.com

[ニューヨーク 8日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米電気自動車(EV)メーカー、テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は、ちょっとした新たな混乱を巻き起こすのを決してためらわない。テスラは8日、暗号資産(仮想通貨)ビットコインに15億ドルを投じたとし、自動車代金のビットコインでの支払いを近く認めるとも表明した。

 2月8日、米電気自動車(EV)メーカー、テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は、ちょっとした新たな混乱を巻き起こすのを決してためらわない。写真はビットコインのモデル。1月撮影(2021年 ロイター/Dado Ruvic)

仮想通貨投資に向かって目配せし、既成概念に反抗するという面で、マスク氏の好みに合っている決定だ。それだけでなく、世の中で定着している枠組みに対する重大な挑戦でもある。今回の場合、揺さぶられるのは会計ルールだ。

テスラの発表を受け、ビットコイン価格は4万4000ドルを超えて過去最高値を更新した。しかし、テスラがビットコインの値上がりやこれに伴ういかなる保有価値の上昇も評価益として計上することはない。価値が減じたときは計上される。

これは奇妙に聞こえるとしても、事実そうなのだ。例えば、決済サービスの米スクエアと同じように、テスラは保有するビットコインを「耐用年数を確定できない無形資産」に区分しなければならない。

耐用年数を確定できない無形資産とは、ブランドや商標などを扱う上でより一般的に使われる概念だ。市場取引価格が取得原価を下回るなど、何か価値を毀損する事態が起きれば、減価分を償却するのが原則だ。一方で、再び評価益が加算されることはない。利益を計上できるのは、資産を売却するときだけだ。

現行の会計手法は、いわば「消去」のプロセスに従う。ところが、ビットコインのような仮想通貨は、何よりも国家政府の信用という裏付けが求められる現金のような定義には当てはまらないし、金融商品の伝統的な形にも適合しない。在庫として定義されるかもしれない有形資産でもない。

一方で、ビットコインは仮想の現金のようでもある。通貨にも近似している。ただし、価値の変動は激しいし、流動性はなお乏しく、発行はアルゴリズムによっている。

また、投機的な金融商品の要素も多い。ビットコインをインフレヘッジ手段と見なす人たちにとっては、デジタル世界における金に相当する。

今のところ現在の会計ルールは、このどの側面にも対応していない。とはいえ企業の仮想通貨投資が広がるならば、会計ルールも修正が必要になるのは間違いない。

現状では結局のところ、ビットコイン価格の値動きの荒さから言って、たとえ最高値更新の場面があったとしても、テスラの保有ビットコインの繰り越される簿価は、切り下がっていく可能性の方が、ほぼ間違いなく高いのだ。

テスラが取得原価と比較して、はるかに値上がりしたビットコインを大量に保有する未来を想像してみてほしい。テスラは原則的に、ビットコイン取得後で最も低くなったときの相場を基に資産価値を報告することになる。これは誤解を生むだろうし、ファンドマネジャーには途方もなく多額のあいまいな利益で投資判断をさせることになる。

マスク氏は、そうした柔軟性をありがたく思うかもしれない。しかし、投資家や会計基準を規定する責任者たちは、これを決して放置すべきではない。

●背景となるニュース

*テスラは8日、ビットコインに約15億ドルを投資したと発表し、近く自動車や他の製品の代金決済にビットコインの使用を認めるとも表明した。これを受けビットコイン価格は10%強上昇し、4万4000ドルを超えて最高値を更新した。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

Let's block ads! (Why?)


からの記事と詳細 ( コラム:テスラのビットコイン投資、会計規則の矛盾浮き彫りに - ロイター (Reuters Japan) )
https://ift.tt/3jxdphh
ビジネス
Share:

0 Comments:

Post a Comment