菅首相の長男がらみの総務省旧郵政幹部不祥事は、テレビのワイドショーなどを見ていると、単なる「国家公務員の倫理の低下や倫理観の緩みの問題」として扱い、批判する傾向が強いようである。ではなぜ、官僚らが明らかに倫理法や倫理規程に反する行為をしたのかと考えると、そこに現在の政官関係の大きな問題点が見えてくる。(室伏政策研究室代表、政策コンサルタント 室伏謙一) ● 総務省は 前代未聞の大スキャンダル 週刊文春によって報じられた、「東北新社による」というよりもっと直接的に「菅首相長男の正剛氏による総務省幹部接待疑惑」はその後、問題、事件に発展した。接待を受けていた幹部も当初の4人から幹部職員ではない者も含めて12人と発覚し、うち11人が国家公務員倫理法違反で減給や戒告等の処分を受けるに至った。 加えて、元総務審議官(事務次官級)で現在は内閣広報官の山田真貴子氏も総務審議官在任中に高額接待を受けていたことが明らかとなり、こちらは給与の一部の自主返納、衆院予算委員会に参考人として出席する予定であった3月1日、突如入院を理由に内閣広報官の職を辞するに至った。 総務省は始まって以来の大スキャンダル、疑獄と言っても過言ではない大事件となった。そして、綱紀粛正や国家公務員倫理の徹底が叫ばれるようになっている。
「接待をした側」が菅首相の長男であり、「された側」が菅政権の肝いり政策である携帯電話料金の値下げを積極的に進める旧郵政系幹部であることもあって、野党は攻勢を強め、山田真貴子広報官の国会への参考人招致まで実現させた。 一方の菅政権側は、関係者の国会招致や速やかな処分によって、早期に幕引きを図りたいようだ(もっとも山田真貴子内閣広報官の突然の辞任劇に、野党側は「優秀な女性官僚が潰された」とさらに息巻いているようであるが…)。 マスコミの報道姿勢も、積極的に取り扱わないか、扱ったとしても接待を受けた総務省旧郵政系幹部に焦点を当てたものが中心のようである。本件を主に国家公務員倫理の問題として扱いたい意図が見て取れる(その後、山田真貴子氏に焦点を当てた報道や、菅首相の対応を批判する報道は増えてきているが…)。 ● 単なる国家公務員倫理問題として 片付けられる問題ではない 時を同じくして、吉川元農林水産大臣のアキタフーズからの収賄事件に端を発した、同社による農林水産省幹部接待事件も、事務次官以下3人が国家公務員倫理法違反で処分されるに至った。 こうしたことも相まって、世間もマスコミも、そして菅政権も、総務省旧郵政幹部接待事件を、「国家公務員倫理の低下や倫理観の緩みの問題」として扱う、捉えるという風潮が強まっているように思えてならない。 確かに、今回の事案は一義的には、利害関係者から先方負担で接待饗応を受けるという、国家公務員倫理の根本に悖(もと)るものであり、この件だけを切り離して考えれば、国家公務員倫理問題そのものであり、国家公務員倫理が大きく緩んできている実態の一端が現れたものと捉えて、その引き締めを検討するというのは当然のことだろう。 しかし、今回の一件は、政官関係が制度的にも情実的にも深く絡んでいることが大きく異なると考えるべきであり、単なる国家公務員倫理問題として片付けられないと考える。 国家公務員倫理は、「ノーパンしゃぶしゃぶ」の接待で話題となった二十数年前の大蔵省不祥事などの官僚スキャンダルに端を発して強く叫ばれるようになり、国家公務員倫理法として結実し、平成12年4月1日に施行されている。 筆者が任官した当時は官僚批判、霞が関批判の嵐が強く吹き荒れており、人事院の初任者研修などでも国家公務員倫理を徹底的に叩き込まれた。また、倫理法施行後は、それに基づく倫理規程がかなり厳格に運用されていたのを記憶している。
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