
大注目の新型トヨタ・ランドクルーザー(300系)の搭載エンジンは、3.5ℓV6ツインターボと3.3ℓV6ディーゼル+ツインターボの2種類が発表された。詳細は未発表だが、間違いないのは3.3ℓV6ディーゼルターボは、まったくの新規開発ディーゼルエンジンであることだ。このV6ツインターボディーゼル、「F33A-FTV」という型式が付いている。果たしてどんなエンジンか? 予想してみる。
TEXT◎世良耕太(SERA Kota)

トヨタ自動車が6月10日に世界初公開した新型ランドクルーザー(300系)には、ガソリンとディーゼルの2種類のエンジンが設定されている。先代の200系は1UR-FE型の4.6ℓV8自然吸気ガソリンエンジンのみの設定だった(国内に限り)。最高出力は318ps(234kW)/5600rpm、最大トルクは460Nm/3400rpmというスペックだ。

新型の300系は3.5ℓガソリンエンジンと3.3ℓディーゼルエンジンを設定し、どちらも「従来型V8エンジンをも超えるクラストップレベルの動力性能とドライバビリティの実現を図っていく」と説明している。両エンジンとも10速ATとの組み合わせだ。先代は6速ATとの組み合わせだった。新型の300系も一部地域ではV6自然吸気ガソリンエンジン+6速AT仕様を設定するとしている。

トヨタはガソリン、ディーゼルともに「新開発」と説明している。3.5ℓガソリンエンジンに関しては、レクサスLS500などが搭載するV35A-FTS型が存在する。LS500に搭載する仕様の最高出力は422ps(310kW)/6000rpm、最大トルクは600Nm/1600-4800rpmだ。ランクル300系が搭載する“新開発の”3.5ℓガソリンエンジンは415ps(305kW)の最高出力と650Nmの最大トルクを発生すると発表されている。LS500のエンジンに対して最高出力でマイナス7ps(5kW)、最大トルクは50Nmのプラスである。新型ランドクルーザーの開発概要を説明した公式動画では、先代の海外仕様が搭載する5.7ℓV8自然吸気(3UR-FE)を引き合いに出し、トルクが大幅に向上している様子を伝えている。
300系が搭載する新型の「3.5ℓV6ツインターボエンジン」は、V35A-FTSをベースに300系専用のチューンを施したものだろうか。それとも、完全新設計なのだろうか。続報を待ちたい。公開された写真を見ると、吸気・内/排気・外のオーソドックスな吸排気レイアウトで、ターボチャージャーはバンク外側、ターボで圧縮し高温になった吸気は水冷インタークーラーで冷却するレイアウトのように見える。Vバンク角は60度のようで、だとすればいずれもV35A-FTSと同じだ。
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注目は完全新開発の3.3ℓV6ディーゼルエンジンだ

いっぽう、ディーゼルエンジンが完全新設計なのは間違いない。現在のトヨタには直4かV8のディーゼルしかないからだ。開発概要を説明する公式動画には新開発のディーゼルエンジンに触れている箇所があり、名称がF33A-FTVであることがわかる。新アーキテクチャーのTNGA導入に合わせて採用された新しい命名法に則った名称で、「F」はシリーズ名、「33」は3.3Lℓの排気量、「A」はTNGA世代を示すものだろう。

「FTV」は4気筒のGDシリーズや8気筒の1DVにも共通する記号で、「F」はバルブ挟み角の小さな省燃費型DOHCヘッド、「T」はターボ過給、「V」はコモンレール式の燃料供給を採用していることを示している。最高出力は309ps(227kW)、最大トルクは700Nmと発表されている。1VD-FTV型4.5ℓV8ターボの最高出力は265ps(195kW)、最大トルクは650Nmなので、排気量を27%も減らしながら、最高出力で44ps(32kW)、最大トルクで50Nmの性能アップを果たしたことになる。
排気量の影響を取り除いて純粋にエンジンの力を示すBMEP(正味平均有効圧)で比較してみると、1VD-FTVは18.3barなのに対し、新開発のF33A-FTVは26.6barとなる。ランドクルーザー・プラドが搭載する1GD-FTV型の2.8ℓ直4ターボは最高出力204ps(150kW)/3000-3400rpm、最大トルク500Nm/1600-2800rpmを発生する。BMEPは22.8barだ。BMEPの比較から、F33A-FTVの高性能ぶりが窺える。

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動画を見ると、F33A-FTVは「ホットV」を採用しているのがわかる。通常とは逆の吸気・外/排気・内のレイアウトで、2基のターボチャージャーをVバンク間に搭載する。各バンクに1基ずつのターボを搭載する一般的なツインターボと異なり、F33A-FTVのツインターボは2基のターボを「プライマリー」と「セカンダリー」に役割分担し、運転状況によって1基または2基を使い分ける。いわゆる2ステージターボ(トヨタは「2ウェイ」と呼ぶ)だ。低回転域はプライマリーターボのみ作動。高回転域はコントロールバルブを開いてセカンダリーターボにも排気を導き、2基のターボを同時に作動させる。これによって低回転域のレスポンスと高回転域の出力を両立する考えだ。
ホットVの2ウェイターボを採用すると、ターボチャージャーを2基採用しても、排気・外のツインターボのように高価な排ガス後処理装置は2系統必要とせず1系統で済み、コストダウンにつながる。吸気取り入れ口からコンプレッサーまでの経路も短くて済み、レスポンス面で有利に働くだろう。トヨタはディーゼルエンジンの性能を大きく左右するターボチャージャーを内製しているが、F33A-FTVでもその伝統を受け継いでいるだろうか。
ターボチャージャーはディーゼルエンジンでは一般的な可変ジオメトリー(VG:タービンに設置したベーンの角度を連続的に制御し、幅広い領域で効率の高い過給を行なう仕組み)を採用しているように見える。高圧になった吸気は水冷インタークーラーで冷却しているようだ。2基のターボチャージャーを無理なく収めるため、Vバンク角はホットVを採用しているエンジンに一般的な90度に設定しているのだろうか。

新型ランドクルーザー(300系)が搭載する新規開発の3.3ℓV6ディーゼル。型式はF33A-FTV型である。


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