ヤマハ発動機は5月24日に開幕した「人とくるまのテクノロジー展2023」に、自動車向け製品・技術のコンセプトブランド「αlive(アライヴ)」の各種技術を展示。高性能レンジエクステンダー(航続距離延長)ユニット『αlive RX』を初公開、さらに水素エンジン技術『αlive H2E』をアピールした。
◆バイク用3気筒エンジン搭載、「空飛ぶ乗り物」用レンジエクステンダー
「αlive」は、モビリティメーカー等への供給を目的とする自動車向け製品・技術のコンセプトブランド。ヤマハ発動機らしい“息づかいを感じるテクノロジー”を提供価値として、エンジン技術や電動モーターユニット、パフォーマンスダンパー、ショックアブソーバー、サウンドデバイス等を包括する。
ヤマハ発動機が初公開したドローン向け高性能レンジエクステンダー『αlive RX』(人とくるまのテクノロジー展2023)その中で、新たに発表されたのが『αlive RX』。小型軽量ハイパワーエンジンの技術と、社内開発のモーター技術を融合したレンジエクステンダーユニットのコンセプトモデルで、ドローン等への搭載を想定しているという。
エンジン定格出力は88kW(発電電力は80kW)で、これまでヤマハが発表していたシリーズハイブリッド(SHEV)のドローン用ユニットと比べて約4倍の出力を実現。SHEVでは連続飛行時間が最大で約4時間、ペイロードが最大約17kgだったが、αlive RXではこれらを大幅に向上し、人間が乗車できるような大型ドローン、いわゆる「空飛ぶ乗り物」に対応するという。
ヤマハ発動機が初公開したドローン向け高性能レンジエクステンダー『αlive RX』(左)また、SHEVではヤマハの産業用ヘリコプターに搭載されている2気筒の水平対抗エンジンが組み合わされているが、αlive RXにはバイク用の3気筒・直列エンジンを搭載する想定。使用燃料もガソリンだけでなくeフューエルやバイオ燃料など次世代CN燃料にも対応することで環境性能も高める。
AM開発統括部・統括部長の原隆氏は、「これから将来に向けて実用化が進んでいくであろう空飛ぶ乗り物、そういったものに向けてこのユニットが活躍できるのではと考えています。ただ、これも含めてまだまだ実用段階ではなくて、研究段階。一番のねらいはやっぱり空ものなんですが、他にも用途があれば検討したいと我々は考えています」と、ドローン以外への展開の可能性も示唆する。
◆「我々はエンジンに対して愛がありますから」
ヤマハ発動機の水素エンジン技術『αlive H2E』(人とくるまのテクノロジー展2023)αlive RXと並んで目玉展示となっていたのが、水素エンジン技術のコンセプト『αlive H2E』。今回のコンセプトは自動車用のエンジンではなく、水素エンジン技術を活用した発電機としての提案だ。水素エンジンは燃料を水素としながら既存のガソリンエンジンの技術や設備、サプライチェーンを活用できることから次世代パワートレインの選択肢のひとつとして期待されている。ヤマハの水素エンジン技術を活用し、トヨタ自動車がレースに参戦していることでも知られる。
原氏は水素エンジンの可能性について、「カーボンニュートラルに向かってはEVが主流になると思いますが、決してEV一本足ではなくて色んな選択肢があると考えています。その中でも水素エンジンというのはひとつの選択肢になる。水素エンジンは、既存のエンジン技術や設備、サプライチェーンなどを活用できるので、これを長く続けることが我々のメリットになる。水素はEVと比べると充填時間においては非常に短く済むというメリットもあるので、そういうところに可能性はあると考えています」と語る。
ヤマハ発動機 AM開発統括部・統括部長の原隆氏αlive RXとαlive H2E、いずれも次世代を見据えたパワートレイン技術だが、単に電動化として置き換えるものではなく、あくまでその中心がエンジンにあるところにヤマハらしさが垣間見える。原氏の言葉にはそのメッセージが強く込められていた。
「αliveは、我々が大切にしてきた提供価値や開発思想、それを言葉やデザインに込めています。今回はカーボンニュートラルに向かって進める中でのエネルギーミックスの過程をデザイン、商品、いろんなもので表現しています。今回のテーマの中でも『エンジンをまだまだこれからもやるぞ』という思いも込めておりますが、我々はエンジンに対して愛がありますから」
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