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データ基盤の運用について、DMBOK2(Data Management Body of Knowledge)では「データストレージとオペレーション」の領域として定義しています。データ自体の運用はここには含まれていません。データマネジメント組織では、この連載の第3回 ビジネス目標を共有、「失敗しない」データマネジメント組織の設計とは で説明したデータベースエンジニア(データベース管理者、DBA)が担当する業務です。
クラウド、特にDX(デジタルトランスフォーメーション)に関わるシステムのデータ基盤運用は、オンプレミスの基幹システムを中心とした運用と大きく異なります。従来は安定性を重視し、できるだけデータ基盤を変更しないように保守的な運用をするのが主流でした。
DXはこれまでより高い頻度でシステムを変更し、イノベーションを起こすことを目標にします。積極的に改善・リリースしたい開発チームに対して、安定性を重視して慎重に計画的にオペレーションしたい運用チームが過度にブレーキをかける事態になりかねません。DXを進めるには、開発スタイルだけでなく運用スタイルの変革も不可欠です。
労働人口の減少、エンジニアの採用難といった社会的背景も、運用スタイルの変更を促します。これまでデータベース運用は、障害対応やオペレーショナルな作業を中心とした、付加価値を生まない経費(コストセンター)でした。効率化してイノベーションに貢献する組織に変わらないと立ち行かないという現実に直面しています。
そこで登場したデータ基盤運用の実践的な取り組みが「データベース信頼性エンジニアリング(DBRE、Database Reliability Engineering)」です。DBREはシステムに求められる信頼性をエンジニアリングによって実現しようとするもので、データ基盤の運用作業を担当するDBAを「データベース信頼性エンジニア」へと変えるものです。
今回は、DBREについて従来型のデータ基盤運用と対比しながら説明したうえで、その実践内容とクラウドで業務を実行する例を解説します。
DBREはSREのDB版
DBREは、サイト信頼性エンジニアリング(SRE)のDB版です。SREは、米Google(グーグル)が開発したサービスの信頼性を高めるための戦略的アプローチです。戦略的と書いた意図は、イノベーションの速度を高めながら安定性と運用コストを維持するという相反する目標の両立を目指しているからです。
SREは安定性だけではなく、システムの更新による改善も成果として追及します。同時に、プロアクティブに自動化と改善を繰り返しながらコスト(工数)の増加を抑えて品質を高めます。運用業務にソフトウエアエンジニアリングの知見を持ち込んで変革を起こす発想です。
SREがインフラ全体の運用を対象にするのに対して、DBREはデータ基盤を対象にします。データ基盤とその他のインフラでは業務を実行するためのスキルセットと職種が異なります。そのため、SREの考え方を流用してDBREが発案されました。DBREは、DBAをオペレーショナルな作業を担当する作業者ではなく、エンジニアリングができる付加価値の高いエンジニアになることを求めています。
DBREはイノベーションを加速するDXを進めるための必要性から生まれたものです。DBREは「100%やるか」「全くやらないか」ではありません。どこにどの程度、DBRE的手法を取り入れるかはシステムごとに決めます。データ基盤以外のインフラ運用を担当するSREとの関係性が深く、同時に取り組むと進めやすいと言えます。
からの記事と詳細 ( 変化と安定を両立、データ基盤運用に求められるデータベース信頼 ... - ITpro )
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