全日本空輸(ANA/NH)を傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)は10月31日、国内線と国際線で運航するエアバスA320neoファミリー全33機が搭載する米プラット&ホイットニー(PW)製エンジン「PW1100G-JM」の点検作業の影響で、2024年1月から3月までに国内線・国際線合わせて22路線2412便、1日あたり約30便を減便すると発表した。
ANAHDでは、今年7月にメーカー側から最初の連絡があった時点で、対象部品の交換時期が近いエンジン5台は運航から外しており、1月の点検開始まで安全上の問題はないことをメーカーに確認しているという。
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—記事の概要—
・ANA保有機の14%がA320neo系
・ANA以外は日系影響なし
ANA保有機の14%がA320neo系
対象機材の内訳は、国際線と国内線に投入しているA320neo(2クラス146席:ビジネス8席、エコノミー138席)が11機、国内線機材のA321neo(2クラス194席:プレミアムクラス8席、普通席186席)が22機の計33機。ANAHDが保有するA320neoファミリー全機が対象で、A320neoは同系列の標準型、A321neoは胴体が長い長胴型となる。2機種とも、1機あたりエンジンを左右の主翼下に1台ずつ搭載する「双発機」となる。ANAHDの保有機材は現在240機で、33機は13.8%にあたる。
PWの親会社RTX(旧レイセオン・テクノロジーズ)は今年7月に、PW1100Gで使われている特定の部品について、「粉末冶金(やきん)」による製造時の不具合が発生している可能性があるとして、エンジンを機体から取り下ろす点検が必要だと発表。RTXやANAHDによると、2015年10月から2021年9月までに製造された部品が対象になる。
ANAHDの対象エンジンは、1月から点検・交換作業を実施。高圧圧縮機のディスクと高圧タービンのディスクが点検・交換の対象部品になる。同社によると、ディスクはエンジンの軸に取り付けられた回転盤で、ブレードを固定する部品。通常はメーカーが定める使用期限まで使い切る種類の部品だという。
PWによると、エンジン1台あたりの作業期間は250日から300日となる見通し。ANAHDでは、使用期限が近い50台のエンジンが1月から順次作業に入り、部品交換を終えた第1陣は来年10月ごろに復帰するとみられる。
エンジンの分解や対象部品の非破壊検査、交換は、PWが手配するIHI(7013)や三菱重工業(7011)グループの三菱重工航空エンジン(MHIAEL)などのエンジン整備工場で実施する。PWは11月に作業内容をまとめた「サービスブリテン(SB)」などの技術指示文書を発行する見込み。
ANAHDによると、今回の検査や部品交換はPWが定めた不具合抑制のための対応強化策で、点検や交換の期限は安全上の余裕をもった設定になっており、部品の交換期限よりも前に実施する「予防交換」にあたる措置だという。
ANAHDの2024年3月期通期決算への影響は、PWエンジン問題で80億円の減収を見込む。
ANA以外は日系影響なし
国内でANA以外にA320neoファミリーを運航している航空会社は、ピーチ・アビエーション(APJ/MM)、ジェットスター・ジャパン(JJP/GK)、スターフライヤー(SFJ/7G、9206)の3社。ピーチはA320neoとA321neoの航続距離延長型A321LRの2機種、ジェットスター・ジャパンはA321LR、スターフライヤーはA320neoで、いずれもエンジンはCFMインターナショナル製「LEAP-1A」を選択しており、今回の問題は影響しない。
また、ANAが運航するA321のうち、4機あるA321ceo(従来型A321)はCFM製「CFM56」を採用しているため、今回の問題とは関係ない。LEAPはCFM56の発展型となる。
PW1100G-JMは、A320neoやA321neo、短胴型のA319neoなど、A320neoファミリーに搭載するエンジンで、PWと一般財団法人日本航空機エンジン協会(JAEC)、独MTUアエロエンジンズが設立した合弁会社IAE(インターナショナル・エアロ・エンジンズ)が主体となり、2011年から開発を開始した。
JAECは全体の23%を担当し、三菱重工航空エンジン、IHI、川崎重工業(7012)が参画している。
今回の作業により、全世界では最大700台のPW1100Gが対象になる見通し。機体数としては、世界で350機程度が2024年から2026年にかけてAOG(地上駐機)になるとみられる。
関連リンク
全日本空輸
RTX
Pratt & Whitney
Pratt & Whitney Geared Turbofan
減便の詳報
・ANA、PWエンジン減便最多は2月 1-3月に22路線2412便(23年11月1日)
10月31日の発表
・ANA、PWエンジン問題で2412便欠航へ A320neoとA321neo全33機が点検対象(23年10月31日)
PW1100G
・A320neo向けエンジンPW1100点検、最大700基取り下ろし(23年9月12日)
・IHIと川重、PW1100追加検査「影響あると想定」(23年9月12日)
・プラット&ホイットニー、GTFエンジンの特設サイト(20年9月4日)
・エアバス、A320neo初号機納入 ルフトハンザに(16年1月21日)
・エアバス、A320neoの初飛行成功(14年9月26日)
写真特集・ANA A321neo初号機
機内編 各席に個人モニターや電源装備(17年9月10日)
外観編 低燃費大型エンジンは直径2メートル(17年9月10日)
写真特集・ANA A320neo初号機就航
第1回 大型機並み装備のビジネスクラス(16年12月27日)
第2回 狭小空間生かしたギャレーと化粧室(16年12月29日)
最終回 新型エンジンで低燃費低騒音(16年12月30日)
からの記事と詳細 ( PWエンジン問題で高圧系ディスク交換 ANA機14%、国内他社影響なし - Aviation Wire )
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