Friday, November 3, 2023

PWエンジン問題で高圧系ディスク交換 ANA機14%、国内他社影響なし - Aviation Wire

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 全日本空輸(ANA/NH)を傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)は10月31日、国内線と国際線で運航するエアバスA320neoファミリー全33機が搭載する米プラット&ホイットニー(PW)製エンジン「PW1100G-JM」の点検作業の影響で、2024年1月から3月までに国内線・国際線合わせて22路線2412便、1日あたり約30便を減便すると発表した。

 ANAHDでは、今年7月にメーカー側から最初の連絡があった時点で、対象部品の交換時期が近いエンジン5台は運航から外しており、1月の点検開始まで安全上の問題はないことをメーカーに確認しているという。

*減便の詳報はこちら

ANAのA321neo初号機のエンジンPW1130G-JM=17年9月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
ANA保有機の14%がA320neo系
ANA以外は日系影響なし

ANA保有機の14%がA320neo系

 対象機材の内訳は、国際線と国内線に投入しているA320neo(2クラス146席:ビジネス8席、エコノミー138席)が11機、国内線機材のA321neo(2クラス194席:プレミアムクラス8席、普通席186席)が22機の計33機。ANAHDが保有するA320neoファミリー全機が対象で、A320neoは同系列の標準型、A321neoは胴体が長い長胴型となる。2機種とも、1機あたりエンジンを左右の主翼下に1台ずつ搭載する「双発機」となる。ANAHDの保有機材は現在240機で、33機は13.8%にあたる。

国内幹線・地方路線と幅広く投入されているANAのA321neo=21年10月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

PW1100-Gの高圧圧縮機セクションと高圧タービンセクションの位置(ANAHDの資料から)

 PWの親会社RTX(旧レイセオン・テクノロジーズ)は今年7月に、PW1100Gで使われている特定の部品について、「粉末冶金(やきん)」による製造時の不具合が発生している可能性があるとして、エンジンを機体から取り下ろす点検が必要だと発表。RTXやANAHDによると、2015年10月から2021年9月までに製造された部品が対象になる。

 ANAHDの対象エンジンは、1月から点検・交換作業を実施。高圧圧縮機のディスクと高圧タービンのディスクが点検・交換の対象部品になる。同社によると、ディスクはエンジンの軸に取り付けられた回転盤で、ブレードを固定する部品。通常はメーカーが定める使用期限まで使い切る種類の部品だという。

 PWによると、エンジン1台あたりの作業期間は250日から300日となる見通し。ANAHDでは、使用期限が近い50台のエンジンが1月から順次作業に入り、部品交換を終えた第1陣は来年10月ごろに復帰するとみられる。

 エンジンの分解や対象部品の非破壊検査、交換は、PWが手配するIHI(7013)や三菱重工業(7011)グループの三菱重工航空エンジン(MHIAEL)などのエンジン整備工場で実施する。PWは11月に作業内容をまとめた「サービスブリテン(SB)」などの技術指示文書を発行する見込み。

 ANAHDによると、今回の検査や部品交換はPWが定めた不具合抑制のための対応強化策で、点検や交換の期限は安全上の余裕をもった設定になっており、部品の交換期限よりも前に実施する「予防交換」にあたる措置だという。

 ANAHDの2024年3月期通期決算への影響は、PWエンジン問題で80億円の減収を見込む。

ANA以外は日系影響なし

 国内でANA以外にA320neoファミリーを運航している航空会社は、ピーチ・アビエーション(APJ/MM)、ジェットスター・ジャパン(JJP/GK)、スターフライヤー(SFJ/7G、9206)の3社。ピーチはA320neoとA321neoの航続距離延長型A321LRの2機種、ジェットスター・ジャパンはA321LR、スターフライヤーはA320neoで、いずれもエンジンはCFMインターナショナル製「LEAP-1A」を選択しており、今回の問題は影響しない。

4機のA321ceoは別エンジンのため運航を続けられる=16年10月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 また、ANAが運航するA321のうち、4機あるA321ceo(従来型A321)はCFM製「CFM56」を採用しているため、今回の問題とは関係ない。LEAPはCFM56の発展型となる。

 PW1100G-JMは、A320neoやA321neo、短胴型のA319neoなど、A320neoファミリーに搭載するエンジンで、PWと一般財団法人日本航空機エンジン協会(JAEC)、独MTUアエロエンジンズが設立した合弁会社IAE(インターナショナル・エアロ・エンジンズ)が主体となり、2011年から開発を開始した。

 JAECは全体の23%を担当し、三菱重工航空エンジン、IHI、川崎重工業(7012)が参画している。

 今回の作業により、全世界では最大700台のPW1100Gが対象になる見通し。機体数としては、世界で350機程度が2024年から2026年にかけてAOG(地上駐機)になるとみられる。

関連リンク
全日本空輸
RTX
Pratt & Whitney
Pratt & Whitney Geared Turbofan

減便の詳報
ANA、PWエンジン減便最多は2月 1-3月に22路線2412便(23年11月1日)

10月31日の発表
ANA、PWエンジン問題で2412便欠航へ A320neoとA321neo全33機が点検対象(23年10月31日)

PW1100G
A320neo向けエンジンPW1100点検、最大700基取り下ろし(23年9月12日)
IHIと川重、PW1100追加検査「影響あると想定」(23年9月12日)
プラット&ホイットニー、GTFエンジンの特設サイト(20年9月4日)
エアバス、A320neo初号機納入 ルフトハンザに(16年1月21日)
エアバス、A320neoの初飛行成功(14年9月26日)

写真特集・ANA A321neo初号機
機内編 各席に個人モニターや電源装備(17年9月10日)
外観編 低燃費大型エンジンは直径2メートル(17年9月10日)

写真特集・ANA A320neo初号機就航
第1回 大型機並み装備のビジネスクラス(16年12月27日)
第2回 狭小空間生かしたギャレーと化粧室(16年12月29日)
最終回 新型エンジンで低燃費低騒音(16年12月30日)

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