イタリアの自動車会社フィアットは、プラグイン・ハイブリッド車(PHEV)が都市中心部のいわゆる「内燃エンジン禁止区域」に入ると、自動的に電気モーターのみで走行するEVモードに切り替えるシステムを開発。地元トリノの自治体と協力して実証実験を行うと発表しました。
ハイブリッドとプラグイン・ハイブリッドはどう違う?
まずはじめに、一般的なハイブリッド車と、今回の実験に使われるプラグイン・ハイブリッド車の違いについて確認しておきましょう。
トヨタの「プリウス」「アクア」や、ホンダの「インサイト」「フィット」など、既に日本でも多くの台数が走っているハイブリッド車は、あくまでもエンジンが主役。モーターはそのアシスト役に徹します。バッテリーはエンジンの余力または減速時に運動エネルギーを回生して充電するだけで、外部から充電することはできません。電気のみで走れる機能が搭載されていても、駐車時や発進時などわずかな距離に留まります(日産のe-POWERはモーターが駆動力の主役ですが、発電機としてのエンジンを停止させたまま長い距離は走れません)。
一方、最近ドイツや韓国の自動車会社が力を入れているプラグイン・ハイブリッド車は、「(充電器の)プラグを差し込めるハイブリッド車」という意味。単に外部の電源から充電できるというだけでなく、通常のハイブリッド車より大容量のバッテリーを搭載しているのが最大の特長です。買い物や通勤など日常的な使用はなるべくエンジンを使わずに(排ガスを出さずに)用が足せるように、自宅や充電ステーションでバッテリーを満充電しておけば、数十kmの距離は電気だけで走れます。
とはいえ、大容量のバッテリーはコストが高く、またエンジンは長い期間使われないことも想定し、それなりの対策を施す必要があります。つまり、どうしても価格が高くなってしまうというわけです。例えばトヨタを例に挙げると、通常のプリウスなら256万5200円からという価格で買えるのに対し、電気のみで68.2kmの距離を走れるプラグイン・ハイブリッド車のプリウスPHV(上の画像)は323万7300円からとなっています。
プラグイン・ハイブリッド車も規制の対象に
まだ従来のガソリン/ディーゼル・ステーションに比べ、(特に地方では)公共充電ステーションの普及が進んでいない現在、1台で内燃エンジン車と電気自動車を状況によって使い分けられるプラグイン・ハイブリッド車は(車両価格に目をつぶれば)多く人々のニーズに合致した自動車と言えるでしょう。
しかし、排ガスを出す可能性がある以上、プラグイン・ハイブリッド車も「ゼロエミッション」とは認められません。2035年にすべてのガソリン/ディーゼル・エンジン搭載車の新車販売を禁止すると発表したイギリスは、「プラグイン・ハイブリッド車も例外ではない」としています。既に2019年には、それまで電気のみで走行可能な距離によってハイブリッド車に支給されていた補助金が廃止され、三菱のプラグイン・ハイブリッド車「アウトランダーPHEV」は大きく売り上げを落としました。
また、欧州ではロンドン、アムステルダム、ブリュッセル、ミラノなど、そして北米でもロサンゼルス、シアトル、バンクーバー、さらに南アフリカのケープタウンやニュージーランドのオークランド、エクアドルのキトといった都市が、2030年にガソリン/ディーゼル車の都市中心部乗り入れ禁止を計画中です。
ジープのプラグイン・ハイブリッド車で実験
フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)が新型プラグイン・ハイブリッド車用に開発したシステムは、このような内燃エンジン車通行禁止区域に差し掛かると、自動的にエンジンを停止してEVモードに切り替えるというもの。さらに車載センサーが完全にエンジンを停止させたことを、自治体の交通管理機関に報せます。この通信によって自治体は車両が電気のみで走っていると認識できるため、内燃エンジン禁止地域への乗り入れを許可することが可能です。さらにこの仕組みを応用すれば、EV専用駐車スペースを堂々と利用できたり、あるいは内燃エンジン車に"通行税"が課せられる地域でも、その支払いを免れるといった恩恵に授かれます。
FCAはイタリア・ピエモンテ州とその州都トリノの自治体と協力し、「トリノ・ジオフェンス・ラボ」と呼ばれるプロジェクトを始動。今夏に発売を予定している新型プラグイン・ハイブリッド車「ジープ・レネゲード4xe」に上記のシステムを搭載して実証実験を行います。
自治体の交通管理システムと連携は世界初
イタリアの都市部にはZTL(Zona Traffico Limitato)と呼ばれる交通規制区があり、その地域内に進入する車両は厳しくチェックされています。トリノでは同市の交通情報システムを運営する5Tというインハウス会社がこれを管理していますが、ジープのプラグイン・ハイブリッド車に搭載されたシステムは、同社のプラットフォームと連携。きちんとエンジンを停止させてZLTへ進入・通行することを、5Tのシステムが管理できると証明されたら、FCAのプラグイン・ハイブリッド車は、内燃エンジン禁止区域でEVとして認められることが可能になるというわけです。
もし、禁止区域でエンジンを始動させるモードに切り替えようとすると、車載ディスプレイに警告が表示され、それでもドライバーがエンジンを始動させると、交通管理局に報される、つまり後ほど手痛い罰金が科せられることになります(通行税なら「課せられる」、罰金は「科せられる」。皆さんご存じですね)。
なお、ジオフェンシング技術を使って内燃エンジン規制区域を認識するシステムは、BMWが既に発表していますが、こちらはクルマが自動的にエンジンを停止させるだけで、自治体の交通管理局がそれを認識するまで至っていません。都市がクルマの状態を把握できるシステムは「世界初」であると、FCAとトリノ市は胸を張ります。
東京は2040年までにガソリン車販売ゼロを目指す
日本では通常のハイブリッド車が非常に(世界的に見ても異例なほど)普及していることもあり、プラグイン・ハイブリッド車の販売に積極的なメーカーはあまりないようです。多くの自動車メーカーは、ハイブリッドからそのまま電気自動車にシフトしていくと見て、そちらにリソースを投入しているのかもしれません。
なお、東京都は「2030年までにゼロ・エミッション車の新車販売割合を50%に引き上げ、2040年までにガソリン車の新車販売ゼロを目指す」との方針を示しています。今のところ、内燃エンジン搭載車を締め出す計画はないようです。
Source: FCA
"エンジン" - Google ニュース
June 05, 2020 at 04:59AM
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内燃エンジン禁止区域に入るとPHEVのエンジンが自動的に停止 フィアットとトリノ市が共同で実験 - Engadget 日本版
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