最近、半導体の需要が増えて、クルマ用半導体が足りず、自動車自体の減産に追い込まれている、というニュースが流れた。この報道を受けて、半導体生産がTSMCに一極集中していることと関連付ける解説も見かける。クルマ用半導体が足りないのは本当にTSMCのせい?
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このところ半導体不足の件があちらこちらで大きく取り上げられている。2021年1月に、ホンダが小型車の主力「フィット(Fit)」で約2500台、軽自動車「Nシリーズ」で約5000台を当初の計画より減産するという関係者の話をロイターが配信して、これを他のマスコミに大きく取り上げられたのが、きっかけになったように思われる。
頭脳放談「第225回 なぜ『IntelのCPU不足』はなかなか解決されないのか?」で解説したようにPC用のCPUはかなり前から不足しているし、いまでも状況はそれほど改善していないようだ。このように以前から半導体不足問題はくすぶっていたはずなのだが、自動車製造に直接の悪影響ということになって、広く関心を集めたのだと想像する。自動車7500台というのは具体的に想像しやすい。ざっくり1台180万円として135億円になる。日本は自動車産業で持っているという頭がみんなにあるせいか、自動車が絡むと扱いが大きくなるのだ。
別に問題を矮小(わいしょう)化しようというわけではないが、もし不足する半導体が1種類で、1台に1個、いや車輪1つに1個としても、たかが3万個(7500台×4個)だ。半導体的には大した数量ではない。ただ、その不足の向こうに恒常的かつ大きな問題が見えるように思われるので、みんな問題にしているのだと思う。
半導体不足の原因は?
アナリストは既に原因を突き止めているのかもしれないが、問題そのものはミクロからマクロまでいろいろな要因が絡み合っていると思われる。
まず、自動車業界にのみ着目するならば、2020年の生産計画の予想が大幅に外れたことに主因があると思う。2020年前半は新型コロナウイルスのせいで、どこまで生産を縮小するかみんな恐れていたに違いない。強気で拡大基調の計画を立てていたとはとても思えない。そんな状況であるにもかかわらず、年の後半になって自動車の需要が急拡大した。結果、利益を上方修正した自動車会社もあったのはご存じの通りである。
ところが、半導体の製造には何カ月ものリードタイムがあることを思い出してほしい。「需要が拡大したから数量を増やせ」と急にいわれても、当該の半導体メーカー側は需要の急拡大に対応できなかったのだろう。重要顧客のために当然、押っ取り刀で増産アクションを取るけれども、効果が出てくるまでには、数カ月のタイムラグが発生するのだ。
数量の多寡は、時間的なタイミングの前後に変換され得るわけだ。それゆえに重要な需要家と半導体会社の間では、正式な発注前に今後の数量見通しなどを絶えず情報交換しているものだ。
コロナ禍で先読みが難しくなっている?
通常の体制であれば、平年の多少の変動幅には対応可能なはず。しかし、世界的なコロナウイルス感染の環境下で、先を読むのは難しい。マイナスからプラスに大きく変動するような状況では、それほど機動的に運用できるとも思えない。読めない時はコンサバな判断に傾きがちなものだと想像する。
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