自動車の脱炭素化に伴い、日本勢が培ってきたエンジンなど内燃機関の技術や市場は今後どう変化するのか。政府が、エンジンを使わずモーターで動く電気自動車(EV)への優遇を強める動きには、業界の意をくんだ議員などから土壇場で「待った」の声がかかった。経済対策には、滑り込みで内燃機関への支援も盛り込まれた。ただ、エンジン存続の鍵となる水素利用には課題も山積している。
水素エンジン車の開発が進む一方、国際的な水素燃料の普及が課題となる(写真=UPI/アフロ)
「日本の自動車業界と雇用を守るには、エンジンを維持すべきだ」。複数の与党議員や政府関係者は、日経ビジネスの取材にこう語った。11月に決まった政府の経済対策には、決定プロセスの終盤で「内燃機関の脱炭素化を推進する」との文言が盛り込まれた。
具体的には水素と二酸化炭素(CO2)を合成して造る液体燃料「e-fuel(イーフューエル)」の開発や普及を支援する。「人工的な原油」とも呼ばれ、ガソリンのようにエンジンで利用することが期待されている。これまではガソリンの燃焼でCO2を排出してきたが、CO2をリサイクルしたこの燃料を使えば、車のガス排出は新たなものというより「循環」に留められるとの理由だ。このほか、水素をそのまま使う水素エンジン車もあり、こちらはほぼCO2を排出しない。例えばトヨタ自動車は5月、静岡県で開催されたレースで水素エンジン車を世界で初めて参戦させた。
当初案から急きょ変更
11月中旬まで、経済対策の原案ではEVへの普及支援が目立っていた。「これだと100万人規模が関わるエンジン産業に対し、示しがつかない」と経済界に近い議員らが慌てた。内々に産業界の意向を探ると、裾野の広い部品メーカーへの配慮が必要という。政府はEVへの部品製造のシフト支援も考えていたが、エンジンのように内燃機関で約3万点に及ぶ部品数は、より構造がシンプルなEVなら半減するともいわれる。激変を緩和するためには、世界のEV化へのうねりに対し、日本発で「EVだけではない環境対応」の流れを作る必要がある。そこで上記の修正案が自民党の政務調査会に出されたのは、11月17日だ。2日後の19日には、正式に経済対策として閣議決定された。
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