Friday, September 23, 2022

【F1】エンジンペナルティルールの再考を求める声・・・有効なのは年間許容基数の増加? - TopNews

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2022年09月23日(金)18:33 pm

フェラーリのチーム代表を務めるマティア・ビノットが、現在のF1エンジンの年間許容数ルールや、それを超えるエンジンコンポーネントを投入した場合に与えられるグリッド降格ペナルティの見直しを行うべきだと示唆した。

■年間許容数とペナルティが厳格に定められているF1エンジン

現在のルールでは、PU(パワーユニット)と呼ばれるF1エンジンを構成するコンポーネントごとに、ドライバー1人あたりの年間の使用基数が厳格に定められている。

2022年の場合、ICE(内燃機関)、TC(ターボ)、MGU-H(熱エネルギー回生システム)、MGU-K(運動エネルギー回生システム)はそれぞれ3基まで。ES(エネルギー貯蔵システム)、CE(電子制御システム)はそれぞれ2基まで。EX(エキゾーストシステム)は8基までとされている。

そして、それぞれのコンポーネントについて規定数を超えるものを投入したときにはグリッド降格ペナルティが科されることになるのだが、最初は10グリッド、2回目以降は5グリッド降格となる。そして、一度に複数の規定数超えコンポーネントを投入した場合にはそれぞれのグリッド降格数が合算されることになるのだが、その合計数が15グリッドを超える場合には自動的に“グリッド後方”からのスタートとなる。

近年のF1では現実的に規定された数のエンジンコンポーネントだけで1シーズンを戦うのは難しく、各チーム、各エンジンサプライヤーは、シーズンのどこでグリッド降格ペナルティを消化するかということを戦略的に判断することが多くなっている。

実際、今季の第16戦イタリアGPでは9名ものドライバーがエンジン交換によるグリッド降格ペナルティを受けることとなり、決勝スターティンググリッドがどのような形となるのか、統括団体であるFIA(国際自動車連盟)が正式に発表するまではよくわからないといった事態ともなっていた。

■年間に使用できるエンジン数を少し増やすべきだとオコン

そのイタリアGPでの混乱を受け、フランス人ドライバーのエステバン・オコン(アルピーヌ)は、エンジンの年間使用許容数について再考する必要があるのではないかと次のように語っていた。

「明らかに、どのメーカーもこれだけ多くのレースに耐えられるエンジンを供給することができないんだ」

「多くを望みすぎているよ。レースが多すぎるんだ」

しかし、2023年にもエンジン交換によるグリッド降格ペナルティにかかわる混乱を避けることは難しそうだ。2023年には今年よりも2レース多い年間24レースの開催が予定されているためだ。

「来シーズンに向けては、使用できるパワーユニットエレメントの数を少し増やすようルールを見直す必要があると僕は思うよ」とオコンは付け加えた。

■ルールのさらなる整備とペナルティの再考が必要だとビノット

フェラーリを率いるビノットもオコンと同様の意見を持っているようだ。

ビノットは、モンツァ・サーキットで行われたイタリアGPでは、予選が終了してから公式にスタート順が発表されるまでに時間がかかりすぎたと指摘し、次のように続けた。

「レギュレーションが十分に明確になっておらず、異なる解釈があることで、あれほど時間がかかってしまったんだ」

「それは間違いなく今後に向けて解決しなければならないことだ」

「私は、ペナルティに基づくグリッドポジションの決定方法だけでなく、与えられるペナルティの量も多すぎると思っているよ」

ビノットもオコン同様に、年間に使用できるドライバーごとのコンポーネント割り当てを拡大することも有効だと考えている。

「1人ドライバーにつき3基のPUというのは、我々が達成したことに対して少なすぎるのかもしれない」

ビノットはそう語ると、次のように付け加えている。

「今後のシーズンに向けて考え直す必要があるのではないかな」

■グリッドペナルティには意味があるとメルセデスのヴォルフ

一方、メルセデスのチーム代表を務めるトト・ヴォルフは、F1エンジン交換に伴うグリッド降格ペナルティを完全に廃止することは非現実的だと述べている。

「もしグリッドペナルティがなければ、我々は予選用エンジンを用意するだろうし、それも5基どころか20基にはなるだろう」

イタリアの『Autosprint(オートスプリント)』にそう語ったヴォルフは、次のように続けている。

「大規模チームは優位に立つために使いたいだけ使ってしまうだろう。だから、それを避けるための要素が必要なんだ。ペナルティがあるのはそのためだよ」

「確かに、ペナルティは複雑になりすぎている。しかし、どんな自由が与えられても、我々はそれを受け止め、さらに戦略的手段として利用していくことになるのを心に留めておく必要がある」

「もし、ペナルティが5グリッドだけ、あるいは10グリッドであったとしても、我々はレースのためにエンジンを壊すだろう。なぜなら、それによってコンマ3秒のアドバンテージを得られるだろうからね。だから、何らかの抑止力が必要なんだ」

■今や重要な戦略的要素となっているエンジン交換ペナルティ

オコンの意見には逆らうようだが、実際のところ、F1エンジンメーカーにとっては1シーズンを3基で乗り切れるようなエンジンを製造すること自体は難しいことではないはずだ。ただ、それだけ長持ちさせることができる耐久性能の高いエンジンにしようとした場合には、どうしてもパフォーマンス面を犠牲にしなくてはならなくなる。

つまり、予選やレースでライバルたちと互角もしくはそれ以上に戦えるだけのパフォーマンスを持つエンジンにしようとすれば、とても1シーズンを3基だけで乗り切るだけの耐久性を持たせることはできなくなり、必然的にシーズンのどこかでグリッド降格ペナルティを受けることになってしまうわけだ。

ヴォルフが言うように、現実的には、たとえ年間の使用許容数を超えることで複数のレースでグリッドペナルティを受けるとしても、シーズンを通した戦い方を考えた場合には、より高性能のエンジンを搭載した方がチームにとってはプラスとなるという側面はあるだろう。

本来、エンジンの年間使用基数制限やそれをオーバーした場合のペナルティが設けられたのは、コスト高騰の抑止や、エンジンメーカー間のパフォーマンス差拡大を抑制するという目的のためだった。だが、現在ではこのルールもチームやエンジンメーカーにとって重要な戦略要素のひとつとなっているのは間違いないようだ。

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