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マツダはプラグインハイブリッド車(PHEV)の発電用にロータリーエンジン(以下、ロータリー)を復活させた。環境規制に対応しにくいことなどから1度は量産終了に追い込まれたロータリーだが、実は電動車と相性が良い。ハイブリッド機構専用エンジンとしては小型かつ十分な出力を備えているからだ。さらに、水素や合成燃料(e-fuel)といった多様な燃料に対応できる利点もある。
ロータリーの特徴として、水素や合成燃料といった「多様な燃料に対応できる“雑食性”がある。カーボンニュートラル(CN:温暖化ガス排出量実質ゼロ)燃料や水素などに対応したロータリーの展開も想定している」とマツダ社長兼最高経営責任者(CEO)の毛籠(もろ)勝弘氏は説明する(図1)。
時代に適合できず生産終了した過去
ロータリーは、三角形で“おむすび形”のローターの回転運動によって、直接動力を得る。ハウジングとローターの隙間にできる空間で燃料を燃やし、このときに発生する膨張圧でローターを回転させる仕組みだ。
同社のロータリー開発担当者は、「2000年代後半ごろからロータリーは“冬の時代”だった」と話す。ロータリーには、燃費が悪いことや排ガス規制の対応が難しいという課題がある。構造的に燃焼室内での気体の圧縮比を高めにくく熱効率も低いことから、ピストン式をとるレシプロエンジンより燃費が劣る。
排ガスについても、窒素酸化物(NOx)は少ない一方で炭化水素(HC)が多い。各国が排ガス規制を強化する中で販売を継続することが難しくなっていた。実際に2010年には、欧州で当時の排ガス規制「Euro 5(ユーロ5)」に適合できず、ロータリーを搭載していたスポーツ車「RX-8」の販売を終了した。その後、ロータリー自体の量産も終了した。
2008年の「リーマン・ショック」や2011年の東日本大震災などの影響もあった。当時急ピッチで進めていた新世代「スカイアクティブエンジン」へのリソース集中や電動化の推進でロータリー開発の優先度は次第に低くなっていった。
実は電動車と相性がよかった
ただ、「ロータリーはマツダにとって宝物のような技術である」と毛籠氏はその重要性を説明する。ロータリーは愛好家が多い。マツダのブランド価値を高めるためにも、技術資産であるロータリーを時代の要請に適合しつつ、復活させることは重要である。
その1つの答えが「MX-30 Rotary-EV」だった。「実はロータリーは電動車と相性がよい」とマツダの関係者は明かす。レシプロエンジンよりも小型で必要な出力を発揮できるロータリーの特徴を生かした。
フロントフード下の構造物が少ない電気自動車(EV)や、電動関連部品の大きさがPHEVより小さい簡易ハイブリッド車(MHEV)と比べ、プラグイン・ハイブリッド・システムはフロントフード下の搭載容積が大きい傾向にある。ロータリーが小型であるため、エンジンをモーターや発電機と同軸上に配置することが可能で、全長4395mm、全幅1795mmと車体が大きくないMX-30 Rotary-EVにも搭載できた(図2)。
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