Sunday, January 14, 2024

BYDがひそかに蓄えるエンジン技術、“4%”から見つけた「希薄燃焼」 - ITpro

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 「独自開発と主張するが、外観・内装ともトヨタ自動車『カローラ』そっくり。テールランプはホンダ『フィットアリア』に似ている」――。

 これは、雑誌「日経Automotive Technology 2005年夏号」に掲載された一文だ。2005年4月開催の「上海モーターショー」の報告記事で、中国・比亜迪(BYD)の新型セダン「F3」をこのように評価していた。

 「偶然と言うには似すぎている。BYDが徹底的に米Tesla(テスラ)を研究したことがうかがえる」。こちらは「日経クロステック」が2023年6月に公開した記事からの抜粋である。BYDの電気自動車(EV)「SEAL(シール)」の分解調査によって、ボディー系ECU(電子制御ユニット)の構成がテスラの「モデル3」と酷似していることを明らかにした。

 トヨタに学び、テスラを研究して成長してきたBYDは2023年8月、新エネルギー車(NEV)の累積生産台数が500万台に到達したと発表した(図1)。EVやプラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池車(FCV)などから成るNEVを500万台生産したのは「自動車メーカーで世界初」(同社)とする。

図1 BYD董事長(会長)の王伝福氏

図1 BYD董事長(会長)の王伝福氏

2023年8月に中国・深センの本社で式典を開催し、NEVの累計生産台数が500万台に達したと発表した。(写真:BYD)

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 BYDには常に、「模倣」という言葉がつきまとう。今後は高級車ブランド「仰望」の展開や世界市場への進出などを狙っており、独自技術を開発する力が強く求められる。2003年に自動車事業へ参入してから約20年、独歩する時期に差し掛かっている。

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トヨタとテスラを「先生」に

 BYDの約20年間を振り返ると、技術の蓄積に力を注いだ時期が2度あった。特許情報を扱うパテントフィールド(京都市)の検索ツールを使い、複数の国に出願した同一特許を1件と数える「特許ファミリー」の単位でBYDの特許を整理した。累計(2023年12月時点)で1万4000件近い特許があり、出願年ごとの特許件数を分析すると2つの“山”が出てきた(図2)。なお、特許は出願日(優先日)から1年半後に公開されるため、直近の出願件数は実際よりも少なく示される。

図2 特許出願が急増したタイミングが2度

図2 特許出願が急増したタイミングが2度

BYDの特許件数を出願年ごとに整理してグラフ化した。(出所:パテントフィールドの検索ツールでデータを収集して日経Automotiveが作成)

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 1つめの山は、2004年から2008年にかけて。トヨタを「先生」と位置付けてF3を設計していたころだ。その後、世界初の量産PHEVとなる「F3DM」の発売に向けて、電動パワートレーン技術の開発を急いだ。

 2つめの山は2015年から2018年にかけて。同社初となるEV専用プラットフォーム(PF)「e-Platform 1.0」の実用化に向けて、EVを構成する電池やモーター、熱マネジメントシステム、ボディーなどの技術を蓄積した。この山のきっかけとなったのは、テスラが2012年に販売を開始したEV「モデルS」だろう。EVの「先生」が造った車両を徹底的に分析し、e-Platform 1.0に開発につなげたとみられる。

 e-Platform 1.0を公開した後も、BYDはEV関連の技術開発を続けている。2021年には、独自構造のリチウムイオン電池「ブレードバッテリー」やそれを搭載するEV専用PFの第3世代品「e-Platform 3.0」などを発表した。2022年に内燃機関車の生産終了を宣言したことから、研究開発テーマはさらにEV関連へと集中させるとみられていたが、実は違った。

 BYDは今、エンジン開発に本腰を入れている。2023年にはエンジンの熱効率を高める希薄燃焼(リーンバーン)関連の特許が、米国やオーストラリア、ブラジルなどで相次いで公開された。大きな狙いは、EV市場の成長が失速した際の備えだ。BYDのしたたかさが垣間見えた。

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