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宇宙航空研究開発機構(JAXA) と三菱重工業が開発している日本の次期基幹ロケット「H3」。その初号機打ち上げが期限不定で再延期された。JAXAが2022年1月21日、明らかにした。JAXAによると、原因は開発中の第1段エンジン「LE-9」のターボポンプに起きた振動だ。
20年5月に実施した燃焼試験で、燃焼室内壁や液体水素ターボポンプのタービン動翼に亀裂が発生。20年度末に予定されていた打ち上げを延期したのに続く、2度目の延期となる。JAXAによると、20年5月の燃焼試験で明らかになった設計上の課題はほぼ解決できていたが、新たなフラッター現象*1が発生すると確認された。今回も予期せぬ振動の発生が延期の理由だったわけだ。
*1 フラッター現象:構造物とその周りを流れる流体とが連成して発生する自励振動現象。今回のH3打ち上げでは、流体力学的な圧力・流量の変動とタービンディスクの変形振動との連成に起因するフラッター現象が発生した。
22年1月の会見でJAXAは、「ターボポンプの振動は解決可能であり、エンジン開発にとって致命的なものではない」という見解を示した。
本当にJAXAの見解通りなのか。結論を先に述べるなら、「問題が致命的ではないのは事実だろう」、しかし、「その問題の解決には大変狭い技術的難題をくぐり抜ける必要がある」と筆者は考える。
H3ロケットの技術面での最大の特徴は、主エンジンの「LE-9」にある。LE-9は、コストダウンやトラブル回避のために構成がシンプルな「エキスパンダー・ブリード・サイクル」という新しいエンジン形式を採用した。詳細は後述するが、このエンジン形式の採用によって、ターボポンプの設計が困難さを増すことは検討の初期段階から分かっていた。
ターボポンプに起因する振動を理由に2度の延期を余儀なくされたとすると、対策を施しても、また別な振動が発生するリスクが考えられる。最悪の場合は、対策を施す→その対策によって新たな振動が発生→対策を施す→また新たな振動が発生——というループにはまり込んで、進退窮まる可能性もあり得るだろう。筆者が「大変狭い技術的難題をくぐり抜ける必要がある」と考えるのは、こうした理由による。
では、なぜLE-9は振動発生のリスクを抱えているのか。本稿ではH3打ち上げ再延期の技術的要因を推察。その背景を解説する。
からの記事と詳細 ( H3ロケット打ち上げ再延期の陰に、主エンジンが抱える振動問題 - ITpro )
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