知っているようで、実はよくわかっていない…そんなことってよくあるよね。それはバイクに関することでも同じことが言える。ならば、ここであらためて、その道のスペシャリストに話を聞いて確実に知識を得よう! ということで、今回はエンジンオイルのマイスターに疑問・質問30連発を答えていただいた!
文:ノア・セレン/写真:松川 忍、柴田直行/取材協力:ワイズギア
ワイズギアのエンジンオイル担当者に直撃取材
「オイル交換」はバイクメンテナンスの基本のキ! 自分で整備するならまずはオイル交換かな、みたいなイメージがあるよね。ただ実際にオイル交換をやろうとすると、作業そのものも案外大変だし揃えなければいけない工具なども多かったりする。
そもそもオイル交換するのにどんなオイルを使ったらいいのもかわからない。ホームセンターにも多くのオイルが販売されているのに、バイク用品店に行ったらそれこそ選択肢は無限にある。オイルブランドだけでなく、その中にも様々な種類がある…これはなかなか複雑だ。
迷った時は純正オイルに限る! その中でもワイズギアが展開する「ヤマルーブ」ブランドは、あのロッシ選手がワッペンをつけて走っていたのだから馴染があるはず。そう、ヤマハは早くから自社ブランドのオイルを展開してきたことで、多くのヤマハユーザーに親しまれてきた。今は6ブランドを展開するヤマルーブのオイル。粘度も(一部スクーター用REDブランド除き)全て10W-40としているため、シンプルで手に取りやすいラインアップになっている。
ヤマハはエンジンを開発するようになったころからオイル作りにも着手し、エンジンの作り込みや不具合の解消をオイル開発と共に進めてきたため、その歴史は古い。それが今のヤマルーブブランドとなったのは1967年、アメリカでのこと。そして世界統一ブランドになったのは92年と、わりと最近の話である。
それ以来ヤマハはずっと「オイルは純正パーツ」と捉えてきた。ゆえに日本自動車技術会によって定められるJASO規格を満たすのはもちろんのこと、それ以上の厳しい独自の社内規格を設けるなど、その性能は折り紙付きだ。今では世界中で認知され、あらゆる地域において高い信頼を得ている。
その一例として挙げられるのが、バイクが日常の移動手段であるインドネシア。現地では高価な財産であるバイクを大切にする意識が高く、エンジントラブルを未然に防ぐために、信頼できる純正オイルを短いスパンで交換するのが当たり前となっている。結果、ヤマルーブオイルの消費量が非常に多い地域となっているそうだ。
長い歴史と確かな性能、そして厳格な社内基準まで設けて作られるヤマルーブオイル。オイル交換をするにあたって、またはそもそものオイルにまつわる様々な「疑問」について、熱い思いをもったスペシャリストから、興味深い話をいろいろお聞きすることができた。
【Q&A】エンジンオイルに関する30の質問・疑問
Q.1 鉱物油、部分合成油、100%化学合成油はナニが違うの?
A.一番違うのは値段! 化学合成油の方がプレミアム
オイルのグレードを選ぶときの基準としたい項目。鉱物油は原油から精製しベーシックな添加剤のみを加えたものなのに対し、合成油は原料であるオイルやガスを化学分解し、使いたい部分だけを抽出し更なる高性能を求めてブレンドしている。
部分合成油はこれと鉱物油を混ぜたもので、化学合成油だけで構成されるのが90年代半ばに登場した100%化学合成油。化学合成油の方がパフォーマンスが高く劣化も緩やかだが、その分高額だ。
Q.2 オイルには硬さがあるってホント?
A.ホント。車両によって指定粘度がある
今のヤマルーブオイルは皆同じ硬さ(粘度 10W-40)で統一されているが、他のオイルメーカーでは様々な硬さのオイルが作られている。
エンジンオイルは、そのエンジンの使用用途や冷却方式によって、または使用する環境、温度帯によっても求められる粘度が違うので、車両の取扱説明書が指定する粘度のものを使おう。エンジンオイルの他にも、ギアオイルやサスペンションオイルなどは様々な粘度のオイルが存在している。
Q.3 10W-40ってどんな意味?
A.使用温度帯の目安となる粘度の数値
米国自動車技術者協会(SAE)が設定した、オイルの粘度(硬さ)を示す表示で、左側のWと共に表示される数値は低温時の性能、ハイフンを挟んで右側に表示される数値は高温時の性能。ただし、この数値は外気温を表示しているわけではないので勘違いしないように。
柔らかい(数値の低い)オイルは寒冷地でもエンジン始動性が良く燃費も伸びる傾向なのに対し、硬い(数値の高い)オイルは高温時でも油膜が切れにくい特性となっている。
Q.4 MA、MA1、MA2、MBってナニ?
A.「クラッチの滑りやすさ」と捉えよう
これは日本自動車技術会(JASO)が定めた二輪車用オイル規格。
ギア付バイクのエンジンはクラッチやミッションもエンジンオイルで潤滑するため、クルマに比べてその役割は多い。バイクの場合、クラッチ滑りの原因となるオイル配合を避ける必要があるので、MAはクラッチ滑りをまねく可能性のある「モリブデン」などを配合していない。
さらにMAは1と2に細分化され、MA2はよりクラッチが滑りにくくなっている。MBはスクーターなどクラッチ滑りを心配しなくていい車種用の配合だ。
Q.5 どんなエンジンオイルを選べばいいの?
A.まずは自分が乗っている車両の説明書を見よう
大前提として、その車種で決められているオイル粘度とJASO規格を守ること。なのでまずは取扱説明書で確認すること。その上でどのグレードのオイルにするかは使い方で決めよう。
空冷エンジンのバイクで真夏に渋滞路ばかりを走るといったオイルに高い負荷のかかる使い方なら、より高いグレードの化学合成油を使った方が安心だ。
Q.6 高額なオイルを入れた方がエンジンには良いの?
A.金額よりもグレードに注目して選ぼう
ブランドを跨いで「とにかく一番高額なものを」ということではないが、同ブランドの中ならよりハイエンドなもの(100%化学合成油)を選んだ方が確かにオイル性能は優れている、しかし、それに連動して価格は高額だ。
高性能オイルはフリクションが少なかったりギアの入りが良かったりといった性能面での優位性だけでなく、酸化や性能の低下具合も緩やかで、オイル交換まで高い保護性能を維持してくれるのも魅力だ。高額オイルはプレミアムスポーツバイク用というわけではなく、セロー250のような空冷エンジンモデルにこそ積極的に使って性能維持に役立てたい。
Q.7 全合成油って100%化学合成オイルのこと?
A.100%化学合成油とは限らない
鉱物油、部分合成油、100%化学合成油と一般的に3種類の分け方がされることが多いバイク用オイルだが、実は明確な基準がなく各メーカー共に表示方法は様々。そのため「全合成油」という表記を目にすることも。しかし、これの中身の割合はメーカーによって違うため、なんとも判断しにくい。
Q.8 季節ごとにオイルの硬さを変えた方がいいの?
A.現在はもう変えなくても大丈夫
オイル性能の向上により、ヤマルーブオイルは全て10W-40なので、通年で使用できる。
ただ寒い時期になるとエンジン内で結露が発生し、エンジン始動から短距離しか走らず、オイルが温まる前にエンジンを停止してしまうような使い方をすると、オイルに水分が混ざりやすくなり性能低下が早まる。冬季こそ早めのオイル交換を!
Q.9 添加剤って何? すべてのオイルに入っているの?
A.鉱物油も化学合成油も添加剤がキモ
化学合成油には様々な添加剤が入っているが、実はベーシックな鉱物油でもベースオイルは80%ほどで、残り20%は添加剤で構成されている。
摩擦を減らす、圧縮や密封を保つ、防錆、洗浄といった様々な機能を満たすために添加剤は必要なのだ。JASO規格では使用量を制限している成分もある。添加剤の配合は各オイルメーカーの腕の見せ所!
Q.10 市販の添加剤をオイルに混ぜても大丈夫?
A.大丈夫とされているが……
アフターマーケットの各種添加剤には「どんなオイルに混ぜても大丈夫」と記載してあるが、何が起きるかわからないのでヤマルーブには使わないで欲しいとのこと。すでに最適なバランスで各種添加剤が配合されているため、他の添加剤を加えると沈殿物が発生する可能性もなくはないという。効果と同時にリスクも考慮しよう。
からの記事と詳細 ( バイクのエンジンオイルを徹底解説|ワイズギアのオイル担当者にたずねた30の質問&疑問 (1/3) - webオートバイ )
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