Friday, August 26, 2022

D1バトルで最強コスパエンジンかも。競技用アメリカンV8の基礎知識【D1GP EBISU DRIFT】 | clicccar.com - clicccar.com(クリッカー)

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■いまアメリカンV8 エンジンが注目の的?

山本選手のGRスープラ
初登場の山本選手が乗るGRスープラ。V8ツインターボエンジンが載っています

D1GP第4戦に、アメリカンV8ツインターボエンジンを積んだGRスープラが初参戦してきました。

昨年度チャンピオンの中村直樹選手も今年からアメリカンV8エンジンのスーパーチャージャー仕様を使っていることもあり、ちょっと今注目の仕様といえるかもしれません。

そこで話を聞いてみたところ、実は安くてパワーが出せて、大馬力を求めようとすると馬力あたりの単価がいちばん安いエンジンなんだとか?

というわけで、アメリカンV8エンジンの基礎知識をご紹介します。

8月20日(土)、21日(日)に開催されたD1GP第4戦と第5戦、全身フルカーボンケブラーの外装というGRスープラが登場しました。ドライバーは新人の山本航選手。マシンを製作したのはスパンレーシング。

そして、搭載しているエンジンはアメリカンV8のツインターボ仕様。排気量は6.2Lでブーストをかければ1300ps以上出せるというハイパワーエンジンです。

そういえば、今季は中村直樹選手もV8スーパーチャージャー仕様のシルビアを投入して活躍しています。このふたつのエンジン、見た目はけっこう違うのですが、兄弟? 遠縁? そして、どれくらいチューニングされたものなの? そのへんを聞いてみました。

●中村選手はLS1、山本選手はLS3ベースのLSX

中村選手のV8エンジン
中村選手のエンジンはLS1のストロークアップ仕様。前戦までボアアップ仕様でしたが、耐久性が落ちるため、ボアはノーマルサイズにもどしたそうです

まず第2戦に投入されたものの、トラブル続きでいったんは「もうイヤ」といっていた中村選手のV8エンジンですが、V8のノウハウを持っている高取サン(元D1GPドライバー)に依頼してオーバーホールを行い、きっちりメンテナンスしてこの第4戦に持ち込んできました。

現在の仕様はというと、LS1のブロックにストロークアップ用の鍛造ピストン(ボアサイズはノーマル)、クランク、コンロッドを組んで、排気量を5.7Lから6.2Lにアップしたもの。シリンダーヘッドは社外のものが組まれているそうです。

なお、LS1というエンジンはC5型のコルベットに搭載されていたものです。

●互換性が高いスモールブロックエンジン

スパンレーシングのV8エンジン
スパンレーシングのV8エンジン。今回はブーストを抑えて1000ps未満で走っていたそうです

いっぽう今回登場したスパンレーシングのGRスープラのエンジンですが、こちらはLS3をベースにしたLSXです。

さて、ここでアメリカンV8エンジンに詳しくないひとはもうなんのことかわからないでしょう。私もよく知らなかったので、スパンレーシングの奥野さんに聞いてみました。

LSXのブロック
ノーマルのブロックはアルミ製ですが、LSXはアルミではなく鉄ブロックです。それでも6気筒の2JZエンジンと比べて極端に重くはないそうです

競技によく使われるアメリカンV8エンジンというと、シボレー(GM)のLS1、LS3、LS7あたりが主流になるようです。これらは『スモールブロック』と呼ばれるシリーズで、すべてOHVの2バルブです。

数字が大きいほうが排気量も大きくなり、LS1が約5.7L、LS3が約6.2L、LS7が約7Lです。

たとえばLS1の中でも種類があったりするそうですが、それでいてこのスモールブロックのエンジンはパーツの互換性が高いこともあって、様々な社外パーツが存在し、モータースポーツ用によく使われています。

競技用トランスミッションなども、まず最初にこのスモールブロック用の型が作られることが多いというほどポピュラーなエンジンだそうです。

スパンレーシングのV8エンジン02
スパンレーシングのエンジンは、ヘッドに『LSX376』と入っています

そしてLSXというのは本来エンジンブロックの名称だそうで、376と454というモデルがあります。これはそのまま排気量(キュービックインチ)で、376は約6.2L、454のほうは約7.4Lというわけです。なお、376のほうは過給器を併用することが多く、スパンレーシングのスープラも、この376のほうを使っています。

そして、このLSXは社外品ではなく、シボレーが販売しています。ブロック単体でも買えるそうですが、コンプリートエンジンも販売していて、スパンレーシングが使っているのはこのLS3ベースの376のコンプリートエンジンです。

細かいレギュレーションがある場合は、ブロック単体を買って、いろいろな部品を調整して組むのがいいそうですが、D1GPのようにエンジンの規制の少ない競技ならコンプリートエンジンを使うのがいいようです。

スパンレーシングのターボ
EXマニホールドもワンオフ品ではなく、このエンジン用に市販されているキットのものだそうです

また、スパンレーシングのエンジンはギャレットのG30-770タービンを2基使ったツインターボ仕様ですが、これも市販されているキットだそうです。

注目すべきは、その価格。エンジン本体だけで120万円くらい。タービンキット等をあわせても300万円かからずに、この1300psオーバーのパワーを出せるユニットが入手できてしまうというのです。「1馬力にかかる金額がいちばん安いエンジンだと思います」と奥野サンはいいます。

●V8エンジンは追走向きかも

中村選手の追走
中村選手はこのV8エンジンを投入してからの4ラウンドすべてで決勝まで勝ち上がっています

さて、実際V8エンジンの戦闘力はどうなのでしょうか? 中村選手は「トルクあるし、何速でも待てるし(※追走の後追い時に、あまり前に進むことなくホイールスピンさせてドリフトを維持すること)、シフトアップで加速するし、いろんな技の引き出しが使えます。やりやすいですよ。最高です」といいます。

かつてV8エンジンを使ったことがあるものの、その後トヨタの2JZエンジンに替えて2020年にチャンピオンを獲った小橋選手は、V8は「ピックアップのよさが魅力です。2000rpmからドリフトできました。エビス西コースの1コーナー立ち上がりなんかは圧倒的によさそう。

ただ、上が伸びないエンジンなので、どんどんシフトアップして低中回転を使って走る必要があるんですけど、当時ボクが使っていたミッションは4速だったので、オートポリスみたいに直線が長いところではキツかったです。

あとは壊れたときに部品がすぐに入手できないこと。そのへんが理由で、2JZに替えちゃったんですけど、そういう問題がクリアできればけっこういいエンジンだと思います。また乗ってみたいとは思ってます」

とのことです。その点、中村選手は相性のいいミッションを使えているのでしょう。

部品の入手に関しては、奥野サンは「もうスペアパーツはひととおり持っていたほうがいいと思います。安いので」といいます。また、オイル管理がややシビアなのと、国産DOHCの感覚で使うとよくなかったりと、アメリカンV8ならではのノウハウは多少あるようです。

さて、競技のほうは、土曜日に行われた第4戦で、横井選手が単走優勝。

そして、第4戦のラウンド優勝は目桑選手でした。

翌日の第5戦では、松山選手が単走も追走も優勝しました。

なお、アメリカンV8エンジンを使う中村選手は、猛烈な走りで両日ともに決勝に進出しました。V8エンジンが活躍すると今後D1GPにもV8が増えていくかもしれませんね。

D1GP次戦は10月22日(土)~23日(日)。大分県のオートポリスで開催です。

D1GPの情報は下記、公式サイトをご覧ください。

(文:まめ蔵/写真提供:サンプロス、まめ蔵)

【関連リンク】

D1GP 公式サイト
https://d1gp.co.jp

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