TEXT:山崎友貴(YAMAZAKI Tomotaka) PHOTO:APIO/SUZUKI
現行ジムニー用のチューニングECUが登場。その実力はいかに?
燃費や環境性能の面で、ギリギリのラインをキープとしている言われる現行型のジムニー。先代のJB23型の乗り味を知っているユーザーには、レスポンスなどで不満が囁かれている。これまでも対策がなかったわけではないが、ようやくECUチューンという選択肢が選べるようなった。
冒頭でも述べたが、現行型のJB64型ジムニーは様々なエンジン制御がECUによってなされている。本来であれば、搭載されるR06A型エンジンはもっとパフォーマンスを発揮できるはずのパワーユニット。だがギリギリの環境性能を維持するため、加速の途中で燃料カットをするなどの制御がされているのである。そのためユーザーには「現行型ジムニーのエンジンは回らない」という印象を与えてしまった。
現行型ジムニーが登場した直後から、アフターマーケット各社はECUのデータ解析に着手したが、第五世代と言われるECUは中身を見ることさえも難しいと言われ、現行型発売から2年経ってもチューニング用ECUの発売には至らなかったのである。
そのため、各社はECUに疑似信号を送ることでエンジンの燃焼状態を変える「サブコンピューター」などのアイテムを発売し、ユーザーに不満に対応していきたという経緯がある。
エンジンを回しても気持ちいいフィーリング
しかし、2023年に入ってECUの解析、マップ変更に成功したメーカーが出てきた。そのひとつが、ジムニーチューニングの老舗「アピオ」だ。ECU開発者によれば、これまで解析が難しかったのは、様々なセンサーからの情報を基に、ECUが燃量や空気調整、点火タイミングなどをリアルタイムに修正するという仕組みゆえだったという。マップ上でどこかひとつのデータを変更しても、ECUが他の部分で修正してしまうのだという。
ノーマルECUの場合、燃費や排出ガスをできるだけで絞るために、立ち上がりで一気にブーストをかけて、途中から抑え気味になっているのだとか。そして、回転数が上がるほどブースト圧が下がるため、気持ちがいいと思えるエンジンの回り方をしないらしい。
アピオのECUは、ノーマルのいい部分は残し、ターボの過給直後から中回転域まで、なだらかにエンジンが立ち上がるように各部のマップ調整を行っている。またトルクリミッター、スピードリミッターを解除。100km/h付近での加速性能も、ノーマルより大幅に向上させている。ちなみに、アピオECUの場合は100km/hで4000rpmに設定。ここで加速したい! と思える速度域で、失速感がないように考えられている。
また、同社が発売している「ハイフローターボ」との同時装着も考慮して、ハイオクガソリンで1kgh/㎠までブースト圧がかけられる仕様も用意されている。
街乗りでも高速域でもレスポンスが向上
アピオECUを装着した車両に試乗したが、ノーマルECUとのフィーリングの差は歴然だった。0→60km/h、100→120km/h付近のレスポンスが断然良くなり、ドライバーの意図を車両が確実に応えてくれるようになった。加えてトルクの喪失感が大幅に減少したことで、特に高速域でのドライブが非常にラクになった。これなら、JB64で遠出をしようという気になるし、ワインディングロード、特に登りの運転が断然楽しい。
アピオECUはどちらかというとAT車を意識したセッティングがされているようだが、試乗したMT車でも十分その差を実感できた。むしろ、MT車でオフローディングを楽しんでいるような人は、交換を積極的に検討すべきだと思う。ちなみに、現在のセッティングはこれでもマイルドな方だということで、市場のニーズがあれば、さらにスポーティな仕様も登場するかもしれない。
●商品名:TOTSUGEKI ECU
●適合:JB64用
●価格:税込95,700円
※ノーマルタービン用とアピオ製ハイフローターボ装着車用の2種あり
●問い合わせ:www.apio.jp
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