- 2021/01/29
- Motor Fan illustrated編集部
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TSIエンジンとはTurbocharged Stratified Injection=ターボ過給成層噴射の頭文字をとったものだ。VWでは、TSIを「直噴+過給ガソリン・エンジン」と定義づける。ここでは、1.4ℓエンジンにスーパーチャージャーとターボチャージャーのふたつの過給機を使ったエンジンについて解説していく。
TEXT:畑村耕一(HATAMURA Koichi)
*本記事は2007年10月に執筆したものです
このTSIエンジンは、1.4ℓで125kW(90kW/ℓ)、240Nmのトルクを発生して2.0〜2.4ℓに匹敵する走りを提供する125kW、圧縮比10の本格ダウンサイジングガソリン・エンジンである。多噴口ノズルの筒内噴射として、高圧縮比にもかかわらず2.5barの過給圧を実現。240NmをBMEPにすれば21.7barになる。最新のツインターボのBMW335i(N54型)が16.9barであることから考えると、その高い性能(ダウンサイジングのポテンシャル)がよくわかる。
ミラーサイクルによる圧縮温度低減効果が30〜50°Cであるのに対して直噴のガソリン気化熱による冷却効果は50°C近くにもなり、過給直噴ガソリン・エンジンのポテンシャルは非常に高い。しかし、過給度を高めると過給時と無過給時のトルク差が大きくなるため、ターボ過給ではターボラグが目立つようになるので、このポテンシャルを使い切れないのが現状である。そこでVWは2400rpm以下では応答遅れのないスーパーチャージャーを使って、この直噴のポテンシャルをフルに引き出して大きなダウンサイジングを実現した。
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VWは低回転をスーパーチャージャーに担当させることでターボラグの問題からターボを解放して、高回転高出力に合わせた比較的大容量のターボを設定した。その結果、高速走行でもターボチャージャーの効率の高い領域を使うことが可能になり、アウトバーン走行でもダウンサイジングの効果を十分に享受できるようになったのである。
このような技術を利用してダウンサイジングを実現して効率の良い6速DSGトランスミッションと組み合わせた結果、2.3ℓのVR6エンジンに比べると、加速性能が向上した上、約20%もの燃費向上結果が得られている。また、格下の2.0ℓ/110kWのFSIエンジンと比較しても約5%の燃費向上を実現した。
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さてTSIのツインチャージャーには125kW(170ps)版と103kW(140ps)版がある。また、アウディA3が搭載する90kWの1.4ℓ直噴ターボ(スーパーチャージャーなし)もある。以上の3つのTSIエンジンの基本は同じ鋳鉄シリンダーブロックを用いており、排気量当たりでは軽量エンジンとは言い難い。ただし、1.8ℓ〜2.4ℓの1クラス上のエンジンと比較すれば十分軽量&コンパクトエンジンであり、これが過給ダウンサイジングの魅力のひとつである。
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TSIのツインチャージャーにはトゥーランが搭載する出力を抑えた仕様があった。過給圧の違いで125kWから103kWにディチューンされ、より低速トルクを高めて扱いやすさを増している。最大トルクも240Nmから220Nmに低下しているが、それでもBMEP19.9barと高レベルで、搭載する車の特性に合わせたダウンサイジングエンジンである。さらに、同じ1.4ℓのTSIとして、S/Cを取り払ったシングルチャージャーの90kW仕様を追加。最大トルク200Nm(BMEP18.1bar)のこのエンジンは1.6ℓ/85kWに代えて、まずアウディA3が搭載した。1.6ℓ比、最高出力は同レベルだが、低速トルクは+66%、中速トルクは+42%で、明らかにひとクラス上のエンジンだ。ただし、1500rpm以下の加速の過渡トルクは1.6ℓと同等かそれ以下になる場合もあり、日常の都市内走行を考えると、これ(1.6ℓ→1.4ℓ)がターボによるダウンサイジングの限界かと思われる。
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