物流大手の日本通運(東京・汐留)が、本社ビルの売却を検討していることが分かった。東京都心では、電通グループも本社ビルを売却する方針が明らかになるなど大手企業が自社ビルを手放す動きが相次ぐ。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経営環境の変化を受け、財務基盤の強化を急ぐ企業の間で今後も広がりそうだ。
日通本社は地上28階建て、高さ約136メートルの高層ビルで、2003年に完成。拠点集約を進めるため、東京都千代田区に新本社を建設しており、9月以降に移転する。
関係者によると、売却額は1000億円を超える可能性があり、投資ファンドなどが関心を示している。テレワークの普及で出社しない会社員が増え、都心のオフィスビルでも短期間で新たな借り手を見つけるのが難しくなっている。当初は本社ビルの賃貸を軸に検討していた日通は、売却も視野に入れ始めた。
一方、電通グループの本社ビル売却額は国内のビルでは過去最大の3000億円規模となる見通しだ。エンターテインメント大手のエイベックスは、東京・南青山の本社ビルを700億円以上で売却すると発表。アパレル大手の三陽商会も昨年、東京・銀座のビルを売却した。3社はいずれも感染拡大で業績が悪化し、決断した。
金融緩和に伴う世界的な「金余り」を背景に、外資系ファンドなどの購入意欲が旺盛で、買い手が見つかりやすくなっている。不動産サービス会社ジョーンズラングラサールの谷口学氏は「日本の不動産市場は欧米より感染拡大の影響が小さい」と指摘する。
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