ホンダが打ち出した大胆な電動化戦略でサプライヤーも変革を迫られる。市場縮小必至のエンジン系部品を手がける、武蔵精密工業社長を直撃した。
ホンダの掲げる「脱エンジン」宣言は「ポジティブに受け止めている」としながらも、生き残り策の確立を急ぐ(記者撮影)
自動車業界で、急激なEV(電気自動車)シフトが進んでいる。海外自動車メーカーが次々と「脱エンジン」宣言をする中、ホンダも2021年には「2040年に世界の新車販売に占める電気自動車(EV)・燃料電池車(FCV)の比率100%」とする大胆な方針を打ち出した。
エンジン関連の部品メーカーにとっては大きな打撃だ。その中で、ホンダ向けのエンジン部品を主力としながら、新たな市場を開拓すべく模索するのが武蔵精密工業だ。EV時代に同社が生き残る道とは。大塚浩史社長に今後の戦略を聞いた。
――50年以上前からホンダにエンジン系部品を供給してきました。そのホンダは、2040年までの「脱エンジン」を表明しています。
僕はポジティブに捉えている。さすが三部さん(ホンダの三部敏宏社長)、思い切ったね、と。あんな発表、ホンダにしかできなかったのではないかと思う。
ただ、多くのサプライヤーには戸惑いがあるのでは。ホンダ系サプライヤーの企業規模は、トヨタ自動車系の10分の1位と小さいところが多い。だからこれからは、ホンダ以外の自動車メーカーの開拓も含めて、自分たちで生きる道を考えていかないといけない。
電動化時代の「インテル」狙う
――武蔵精密工業にとっての「生きる道」とは何でしょう。
電動化の時代を迎えれば、エンジンやトランスミッション(変速機)などの部品の数が減ることは避けられない。それならば、当社は「電動化の時代の主役となるようなキーデバイスのサプライヤーになろう」と。5年か、それ以上前からいろいろと議論をしてきた。
そこでわれわれが作れるものは何かと考えたとき、EVで欠かせない(モーターから出力したエネルギーを調整する)ギアボックスだ、という結論に至った。
――なぜ、ギアボックスに商機があると?
当社はこれまで、トランスミッション用のギアを何億枚と作ってきたが、その過程で培ってきた、人材を含めた技術、生産設備などのすべてのインフラを生かすことができるからだ。
電動車の戦略商品として拡販中のギアボックスに用いられる差動機構部品(武蔵精密工業提供)
しかも、(ギア単体ではなく)ギアボックスとして提供する。日本電産が(主力のモーターとインバーター、減速機を一体にした)eアクスルに力をいれているように、今はキーデバイスを集め、組み付けて提供するのが時代の潮流だからだ。
アメリカのインテルはCPUでパソコンになくてはならない存在になったが、大げさな表現をすればわれわれも(電動車における)インテルのようなポジションを狙っていきたい。
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