Monday, March 14, 2022

欧州「ユーロ7」導入間近で超逆風!! エンジン車の生存確率と達成すべき難題 - ベストカーWeb

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 2014年、EU(欧州連合)は、自動車の排気ガスを規制するために、「ユーロ6(Euro 6)」を施行。2015年には、フォルクスワーゲン(VW)のディーゼル排出ガス偽装問題以降、日本に比べ厳しい条件での適合を求めている。

 さらに、2025年施行予定の「ユーロ7」には、現行の規制項目に加え、アンモニア、メタン、二酸化窒素に対する規制が追加され、厳しい基準になる予定だ。

 排気ガス規制「ユーロ6」、「ユーロ7」に触れつつ、自動車メーカーが抱える排気ガス規制と電動化戦略の行方について考察する。厳しい規制の背景にあった大きな課題とは一体なにか?

文/御堀直嗣
アイキャッチ写真/ROS – stock.adobe.com
写真/Adobe Stock、HONDA、NISSAN、MITSUBISHI、池之平昌信、平野 学

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欧州の排気ガス規制「ユーロ6」とは?

 欧州は、2025年から開始予定のユーロ7で、エンジン車からの有害物質の排出量や、燃費規制をさらに厳しくする予定だ。

 現行のユーロ6においても、有害物質の排出に関しては、フォルクスワーゲン(VW)によるディーゼル排出ガス偽装問題を受け、試験機でのモード走行による検査に加え、実走行による審査も行われ、日本などに比べはるかに厳しい条件での適合を求めている。

 たとえば、ディーゼルエンジンに限らずガソリンエンジンについても、筒内直噴(いわゆる直噴エンジン)で燃料を供給している場合、粒子状物質(PM)の排出があるため、これを浄化するガソリン・パティキュレート・フィルター(GPF)を装着しなければならない。

 燃費においても、95g/kmという二酸化炭素(CO2)排出量規制が、企業値として定められているので、日本式にいえば約28km/Lの燃費性能を販売する新車すべての平均値として達成しなければならない。ことに大型で重量の重いラグジュアリーブランドや、スポーツカーメーカーは厳しい状況にすでにある。

2025年施行予定「ユーロ7」はどこまで厳しくなるのか

ユーロ7が施行されると、厳格な規制への対応コストが非常に高くなる。そのため、エンジン車は条件を達成できたとしても新車価格の上昇が予想される(Grecaud Paul – stock.adobe.com)

 ユーロ7になると、排出ガス規制では、これまでの一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)に加え、アンモニア(NH3)、メタン(CH4)、二酸化窒素(NO2)に対する規制が追加される可能性がある。アンモニアは人体に有害な物質で、三元触媒によってNOx処理をした際に排出される。

 また、急加速や重い重量を運ぶような負荷がエンジンに掛った際にも排出量が増える。メタンは、オゾンを生成する。オゾンは、上空に層状にあることで紫外線を和らげる効果を持つが、その量が増えれば呼吸困難や麻痺を起こさせる懸念がある。

 メタンはまた、CO2の数十倍という強い温室効果ガスでもある。二酸化窒素は、呼吸器への影響があり、これまではNOxの一部として規制されてきたが、個別の規制対象となる。

 以上のような有害物質を浄化するには、新たな触媒を追加装備しなければならなくなり、それは原価の積み上げにつながる。

 燃費(CO2排出量に通じる)では、ユーロ7となることにより、現状に比べ2025年にはCO2排出量規制で15%、30年には37.5%の削減が予定されている。このため、単純計算で80g/kmから60g/kmへ、段階的にCO2排出量の削減を強めていくことになる。

 そのうえ欧州におけるWLTCでは、超高速走行領域もモード試験項目に入っているため、その部分が削減されている国内の燃費規制よりCO2削減への対応は厳しい条件下にある。

 日本は、高速道路の一部区間を除いて最高速度が時速100kmに制限されているため、超高速とよばれる時速130kmでの測定を行っていない。空気抵抗は、速度の2乗に比例するので、たとえば時速60kmと時速120kmの空気抵抗は、2倍になるのではなく4倍になる。超高速域での燃費性能を審査されることは、高い水準での空力的造形や、動力源での省燃費性能が実現されなければ基準の達成ができないことを意味する。

 欧州では、すでにユーロ6においても排出ガス基準とCO2排出量について、日本と比べものにならない厳しい条件下にある。さらに3年後に控えたユーロ7が実施されるとなると、燃料を燃やして使うエンジン車は、ガソリンかディーゼルかを問わず達成が難しくなり、たとえ達成できたとしても、排出ガス浄化に関わる追加触媒など後処理装置の取り付けに費用が掛かり、新車価格の上昇につながっていくことになるだろう。

次ページは : 自動車メーカーが抱える排気ガス規制と電動化戦略の行方

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