レッドブル・レーシングのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコは、フェラーリがホンダやメルセデスを超えるエンジンパワーを発揮しているとみており、跳馬が2022年シーズンのチャンピオン争いに加わると警戒を強めている。
バルセロナで開催された3日間に渡る第1回プレシーズンテストではフェラーリが特に目立ったパフォーマンスを発揮していた。シーズンの行方を占う上での重要指標の一つ、周回数では439ラップの大量マイレージを稼いで頭ひとつ抜けると共に、ラップタイムでは上位勢より硬めのC3タイヤながらもトップのメルセデスから0.551秒落ちの4番手を刻んだ。
ライバルをリードするフェラーリ製パワーユニット
マルコは独RTLとのインタビューの中で、F1バルセロナテストでの収穫はフェラーリが「メルセデスとレッドブルのトップドッグに加わった事」を確認できた点にあると述べ、エンジンパワーでは「フェラーリがリードしているようにさえ見える」と語った。
パワーユニット(PU)面におけるフェラーリの仕事ぶりに拍手を送っているのはメルセデスも同じだ。トト・ウォルフ代表は「我々は現時点で、フェラーリが最も強力なエンジンを持っていると考えている」と語った。
ホンダはF1史に残る劇的なフィナーレを迎えた昨年のアブダビGPを以てこのスポーツから退いたものの、今季も引き続きHRC(株式会社ホンダ・レーシング)を通してレッドブルとアルファタウリを支援しており、両チームが積むE10燃料対応の新しいパワーユニット(PU)は栃木県にあるHRD-Sakuraで製造されている。
また、ホンダF1のマネージング・ディレクターを務めていた山本雅史氏は、自らが昨年に立ち上げた新会社、MASAコンサルティング・コミュニケーションズを通して引き続き2チームとホンダとの”架け橋”を担っている。
Motorsport-Totalによるとアルファタウリのフランツ・トスト代表は、メンバーや運用を含めてホンダ側のサポートは「昨年と違いない」としており、”F1撤退”とは言えども、実態はそのイメージとは大きくかけ離れている。
プレシーズンの現段階でスクーデリアが先行していると考えているのはマルコやウォルフだけではない。
アルピーヌのフェルナンド・アロンソは「メルセデスも速い」としながらも「フェラーリが最速のマシンだという事に疑いはない。これはカルロス(サインツ)にとってもスペイン全体にとっても、素晴らしいニュースだ」と語った。
フェラーリ自身は具体的な数字を明らかにしていないものの、マラネロのチームが2022年のPU開発凍結に向けて生み出した「066/7」は、昨年の試験導入によって少なくないパフォーマンス向上が確認された新型ハイブリッドに加えて、シェルが出資するブラジルの合弁会社、ライゼンから独占供給される第2世代のバイオ燃料が用いられており、2020年から2021年にかけて達成した以上の大幅な改善を果たしたとみられている。
2020年仕様のフェラーリPUは、燃料流用不正疑惑を受け前年に発行された技術指令書により約50馬力ダウンを強いられたと考えられている。つまり翌21年に向けての改善は非常に大きなものであったわけだが、2022年仕様はそれを凌ぐというのだから事実であれば「飛躍」と言う表現が適切だろう。
RB18の弱点、対処可能とマルコ
新たなグランドエフェクトカー時代に向けてエイドリアン・ニューウェイ率いるミルトンキーンズの技術チームが作り上げたRB18は、その精悍で絞り込まれたイメージとは裏腹に”肥満”が課題の一つだとみられているが、他のチームと同じ様にポーパシング現象にも悩まされていた。
だがマルコは3月20日のバーレーンでの開幕戦までに、ダウンフォースの喪失と回復が繰り返される事によって生じるこの激しいピッチングを「コントロールできる」としており、過度に心配してはいない。
レッドブルにとっては、マックス・フェルスタッペンのタイトルを防衛し、オランダ人ドライバーが乗る2023年型マシンに引き続き「ナンバー1」を掲げる事が今シーズンの最優先事項だが、当然、メルセデスが8年に渡って独占するコンストラクターズ・チャンピオンの獲得も視野に入れている。
チーム戦は個人戦とは異なり、2名のレギュラードライバー双方の安定的なパフォーマンスが求められる。
マルコは2022年シーズンがメルセデスとフェラーリとの三つ巴の争いになる可能性があると考えているが、レッドブルには「素晴らしいチームプレーヤー」であるセルジオ・ペレスという「確立されたドライバー」がおり、また、フェルスタッペンは世界選手権タイトルを手にした事で落ち着きを以て「更に強くなる」として期待を寄せている。
また、幾つかの課題がありながらも、バルセロナでのRB18は「パフォーマンス、燃費ともに満足のいくものだった」として、フェルスタッペンとペレスは「クルマに良い感触を得たと言っていた。無論まだ弱点はあるが、比較的軽微な技術的努力で対処可能なように思う。第一印象はとても良かった」と続けた。
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