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2022年6月、トヨタ自動車の水素エンジン車が富士スピードウェイに帰ってきた。1年前、「スーパー耐久シリーズ2021」の第3戦となる24時間レースで鮮烈デビューした“32号車”だ。
この1年間でいったい何が変わったのか。進化と深化をひもとくため、筆者はレース会場に向かった。そして、トヨタが目指している水素エンジン車の実用化への思いも探ってみた。
2022年6月3日から5日にかけて富士スピードウェイで開催された「スーパー耐久シリーズ2022」の第2戦。32号車「ORC ROOKIE GR Corolla H2 Concept」は、決勝レースではST-Qクラス6位、総合52位で24時間を完走した。
周回数は2021年の358周から120周も多い478周と大幅に伸ばした。1周のラップタイムも予選では1分58秒台を記録し、昨年(2021年)よりも約5秒速くなっている。決勝でも1分59秒台が出ていて、目標の2分切りを達成した。
ちなみに、決勝レースの最初と最後のステアリングを握った「モリゾウ」ことトヨタ社長の豊田章男氏のラップタイムは、この1年間で約7秒短縮したという。2秒はモリゾウ選手の技術レベルが向上したということだ。2分4秒台が何度か出ていた。
1年間での水素エンジンの成長
やはり水素エンジンの進化と深化だ――。トヨタGAZOO Racing Company GRパワトレ開発部主査の小川輝氏に話を聞いて実感した。
レースで使うエンジンは、2020年に市場投入したスポーツカー「GRヤリス」に搭載した怪物エンジン「G16E-GTS」がベースである。排気量1.6Lで直列3気筒の過給直噴エンジンを水素エンジン化したもので、基本構成は2021年のデビュー当時から変わっていない。
それでも、「インジェクターなど燃料供給系にとどまらず、さまざまな検討と評価を積み重ねてきた」(小川氏)という。変更を繰り返した大きな目的は、水素直噴エンジン燃焼における最大の課題である「プレイグニッション(早期着火、以下プレイグ)」を解決するためだ。
プレイグは、シリンダー内で起こる異常燃焼である。詳細は昨年のコラムをご覧いただきたいが、通常点火よりも早く自着火してしまう現象である。2021年は、点火時期制御などで回避していた。小川氏は「恐る恐る対応していた」と振り返るが、これはプレイグの発生条件を正確に把握しきれていなかったからだ。
トヨタはこの1年間をかけてこの課題と向き合い続けた。手応えは、チームのムードからも分かった。昨年のように祈るような雰囲気はなく、余裕と明るさにあふれていたように感じた。
プレイグを理解し、抑制する――。今回の水素エンジン車におけるトヨタの取り組みで筆者が注目したのは、(1)燃焼状態の可視化技術と(2)水素噴射圧の可変制御の2つである。順に解説していこう。
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