Saturday, July 2, 2022

沖でボートのエンジンかけたらスターターの紐が「ブチッ」 はじめて使った中古船外機で悲劇【敦賀海保日誌】 - 福井新聞

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故障した船外機(2022年5月・福井県高浜町)

故障した船外機(2022年5月・福井県高浜町)

な、なんと、こんなにも早く梅雨が明けてしまったではありませんか!!
雨の日なんて数えるほどしかなかったのに・・・
詳しくは分かりませんが、漠然と地球のことが心配になるのは私だけでしょうか。

ところで、梅雨(つゆ)って、なんで「梅」の字を使うのか知ってますか?
これは、中国の揚子江あたりでは、梅の実が成熟する時期がちょうど雨期にあたり、このことから梅の字を使い雨期のことを「梅雨」と表すこととして、中国から日本に伝わってきたそうです。
他にもいろいろあるでしょうに、なぜ「梅の実」がフューチャーされたのかは謎ですけれどもw

さて!ここからが本題です!
2022年5月下旬、福井県高浜町の沖合でミニボートのエンジンが故障し、乗っていた男性1名が岸に帰れなくなり遭難する事故が発生しました。

この日の午前9時ころ、海上保安庁の緊急通報118番に救助を求める一報が!梅雨前の時期であったにもかかわらず暗雲立ち込めます。
内容は「ボートのエンジンが動かなくなり帰れなくなってしまった」というもので、高浜町の沖合にミニボートで釣りに出ていた30代男性からの通報でした。
数ある海難事故の中でも、ミニボートのエンジントラブルは、海上保安官なら『またか~』と思ってしまうほどたくさん発生しているんですが、それはいったいなぜなんでしょうか・・・

⇒草刈り機を改造した船外機が故障…オールも折れ漂流の憂き目に

ミニボートに乗っていた男性は、通報で「差し迫った危険はない」と言っていましたが、海の上ではいつ危機が訪れても不思議ではありません。
直ちに救助する必要があり、民間のボランティア救助団体である「水難救済会」に所属する地元漁船に出動を要請。現場へ急行し、通報があった場所の辺りをしばらく捜索すると、漂流しているオレンジ色のミニボートを発見。元の出港場所まで引っ張り無事に救助することができたのでした。

見事に救助を行っていただいた漁船から、ミニボートの引き揚げ場所に駆け付けた海上保安官が対応を引き継ぎ、事故に遭った男性に事の経緯を聴きました。

まず、故障した2馬力の船外機。これは半年前に男性がネットオークションで購入した中古のもので、この日初めて使ったということでした。
ところがこの男性、この中古の船外機を購入してから今日出航するまでの間、一度も試運転や点検、メンテナンスを行っていなかったというのです。
つまり中古である船外機に不具合があるかどうかも確かめないまま、海に出たということだったんです。

それに、出港した場所から男性が救助された海域までは約4kmもの距離があったんですが、この距離をボートで走っている間、途中何度も不具合でエンジンが止まり、また掛けては走りを繰り返していたそうで、それでも引き返すことなく目的地に向けて走り続けていました。
最終的に、また止まったエンジンを掛けようとスターターの紐を勢いよく引っ張ったところ「ブチッ」と切れてしまい、もう二度とエンジンの起動ができなくなってしまったのでした・・・。

⇒夫婦で釣り中に叫び声…アタリの瞬間、防波堤から突然消えた夫

いやぁー・・・なんか、教習所の教科書にやってはいけない事例として出てきそうな事故ですよね。
このように、海の上でのエンジン停止という「緊急事態」を「緊急事態」だと感じないということが、どれほど危険なことか考えなければなりません。

いろいろと突っ込みどころの多い事案ではありましたが、この事故を通して見えてきたのは、「知識」「技術」「経験」の足りなさがミニボート事故の多さに起因しているのでは?ということ。
中古船外機を購入後、一度も点検を行わず出航当日を迎えていること、また、出航後もエンジンが不調であるにも関わらずそのまま沖合の目的地へ向かっていること、これらは海の知識などがある人であれば、無謀な行為だと分かるのですが、それが無ければ、“危ないことをしている”という自覚すら生まれないんです。

ミニボートは、エンジンの出力が2馬力未満かつ船体の全長が3m未満の動力付きボートのことで、船体の検査や操縦資格が無くても海に出ることができます。
つまり、操縦資格を取得するときに学ぶ海や船にまつわる知識が一切無い人でも、今からでもボートを操縦して大海原に出航することができてしまうということなんです。
このほかに、ミニボートのメリットの一つとして、その維持管理に掛かる費用が比較的「安い」ことが挙げられます。
ただ、「安く」浮かせたい一心で、インターネットなどで販売されている粗悪品や改造品に安易に手を出すと、結果として痛い目に合うのは自分自身です。
「手軽」のうらに潜む「危うさ」にもっと目を向けなければなりません。

⇒釣り、マリンスポーツ中の思わぬ事故、連載「敦賀海保日誌」を読む

誰でも最初は初心者です。「知識」「技術」「経験」だって、一朝一夕で身に付くものではありません。
しかしながら、「慎重」にトライすることは誰にだってできることだと思います。
事故に遭った人は、みなさん口をそろえて「これくらいなら大丈夫だろうと思った」と言います。そんな大胆さは海の上では禁物!石橋を叩いて渡るくらいがちょうどいいのかもしれません。

早い梅雨明けで例年よりも長くなる夏のレジャーシーズン。
この時期が、梅の実のように、みなさんの海の安全に関する「知識」「技術」「経験」を成熟させ、実りある時期となることを切に願っています。ボートレジャーの暗雲も梅雨明けと同時に晴らしましょうよ!と、ちょっと“うめぇ”こと言っちゃいました!(敦賀海上保安部・うみまる)

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