レスポンス編集部が入手した、実際に動く小型エンジン製作キット、『Toyan X-Power』。エンジニアリングにはど素人の編集部員がこのキットを組み立て、実動エンジンを目指す企画の後編をお届けする。
「前編」では妙に綺麗な重箱に詰め込まれた部品を確認し、中国語とイラストで表現された説明書に悪戦苦闘しながら、カムシャフトを組み立てるところまで進めた。普通のプラモデルでは得られない、「自分で作ったものが動く」快感にニヤケが止まらない筆者だが、今回はいよいよ点火を目指していく。
超小型エンジン組み立てキット「X-Power」、キャブレターの制作風景モノづくりはコミュニケーションのネタになる
さて、筆者はレスポンス編集部にアルバイトとして所属しながらも、本業は大学生であり、しかも自動車部に所属している。この日も部室で黙々とエンジン製作をしていたところ、何名かの後輩たちが製作を手伝ってくれると言う。
作業を任せてみると、瞬く間にエンジンの本体を組み上げていった。優秀な後輩を持てて幸せである。しかし、よく見るとガスケットを上下反対に装着しようとしていた。自動車部らしいなぁとしみじみ思う。
彼らは多少のミスにもめげず、次の工程であるキャブレター作りを始めた。入部したての1年生も興味津々で、説明書や解説動画を見ながら試行錯誤している。1人で作っていても楽しいが、機械好きな友人や、家族で作れば会話も増えて、楽しさが倍増すること請け合いである。モノづくりはコミュニケーションにも役立つということを実感した。
超小型エンジン組み立てキット『Toyan X-Power』、参考動画を見ながら悪戦苦闘エンジン製作を通じて社会の構図を学ぶ
かわいい後輩たちがせっせとキャブレター作業に勤しむ間、1人でもできる部分を進めていく。セルモーターを取り付け、排気管を取り付ける。この排気管は柿ピー程度のサイズ。本当にこれで適切な排気ができるのか気になるところだ。
このあたりから、だんだんビスのサイズが合わなくなってきたり、部品が足りないんじゃないかという会話が増え始めた。皆疲れてきて、投げやりになってきたものと見える。また、複数人で分業を進めた上、適切な情報共有を全員が怠ったため、自分の担当以外の場所で一体何が起こっているかも分からない。意図せずして「社会」を学んでしまった気分になる。このエンジンキット、得られる学びが多すぎるのではないか。
個人の作業は迷走しているが、見た目はかなりエンジンっぽくなってきた。配線やホースを張り巡らせれば、外見はほとんど完成と言って差し支えないだろう。試しにフライホイールをくるくると回してみれば、組み付けられたベルト類がきちんと回転し、最終的には反対側のラジエーターファンが動く。内部構造もとりあえずは問題が無いようだ。ファンとラジエーター本体がガッツリ干渉しているが、力技でごまかす。これで、名実ともに、夢のミニエンジンが完成だ。
超小型エンジン組み立てキット「X-Power」、完成(?)いよいよ始動!しかし…
完成したとはいえ、実際に動かすためにはもう一手間かかる。バッテリーを組み合わせ、さらに燃料を入れねばならない。そこで、ラジコン用のLi-Poバッテリーと、燃料を手配した。ちなみに燃料はガソリンではなく、メタノールをベースに着火促進のためのニトロメタンが加えられた、エンジンラジコンなどで利用されるものだ。
まずはバッテリーを接続し、始動のテストを行う。燃料は入れず、とりあえず機構がしっかり働くかどうかという確認である。ここまでの苦労が、いよいよ形になる時が来たのだ。万感の思いを込めながら、スタートボタンをポチッと押す。すると、「ウィーン!」という音と共に、元気よくフライホイールが回り始めた。
…と、思ったのも束の間、すぐに「ガガガッ」という音が混ざり始めた。よく見ると何らかの抵抗を受けてベルトが滑っており、正常に回転しているとは言えない状況だ。手回しする分には何も問題がなかったのだが、これでは実際に始動することはできないように思われた。
超小型エンジン組み立てキット『Toyan X-Power』改めて調べ直してみると、バルブタイミング合わせを失念していたことが発覚。エンジンの吸気と排気に重要な役割を果たすのがバルブであるが、これの開閉タイミングがバルブタイミングだ。これがしっかり取れていないと、大小様々な不具合を起こす可能性があるのだ。せっかく組み上げたエンジンを、また分解して組み直し…目の前が暗くなったことは言うまでも無い。
しかしながら、このエンジンを製作している時間は非常に充実したものだった。部員間の会話のネタにもなり、純粋に手先を動かしてモノを作ることを楽しめた。バルタイ合わせも面倒な作業にはなりそうだが、授業と部活の合間を縫って、コツコツと進めていければと思う。果たしてこのエンジンに火が灯される日は来るのか。その暁には、改めてレポートしたい。
超小型エンジン組み立てキット『Toyan X-Power』を本物のエンジンと比較からの記事と詳細 ( 「完成した!…のか?」排気量7ccの超小型エンジンを組み立ててみたら「学び」が多すぎた[後編] - レスポンス )
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