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豊田自動織機でフォークリフト向けエンジンの不正が発覚した。対象はディーゼルエンジンとガソリンエンジンで、前者では劣化耐久試験における法規違反と排出ガス規制値の超過が、後者では劣化耐久試験における法規違反が見つかった(表)。これらのエンジンを搭載したのはフォークリフト「ジェネオ」シリーズで、排出ガス規制値を超過したディーゼルエンジンを搭載した車両はリコール扱いとなる。リコール対象台数は7万1300台に上る。
トヨタ自動車グループにおいて日野自動車に続いて起きたエンジンがらみの不祥事だ。豊田自動織機は外部の弁護士に調査を依頼しており、不正を公表した2023年3月17日時点で見つかった不正は4つある。ディーゼルエンジンとガソリンエンジンで共に2つずつだ。同社の技術者は何をたくらんで不正に手を染めたのか。エンジンの専門家(以下、専門家)の見立てを聞いた。
ディーゼルエンジンの不正の中身
不正が見つかったディーゼルエンジンは、排気量が1795ccの「1ZS型」と2982ccの「1KD型」の2つ(図1、2)。不正の内容は共通しており、[1]排出ガス成分に推定値を使用した、[2]試験の運転モードにエンジン側の制御ソフトウエア(以下、ソフト)を操作して対応した──というものだ。
[1]の排出ガス成分に推定値を使用したという不正の中身は、データのねつ造だ。劣化耐久試験(以下、試験)中に排出ガス中のPM(粒子状物質)の値が高くなりすぎたため、途中で燃料噴射装置を改良した。ところが、豊田自動織機は改良した燃料噴射装置(以下、改良品)を装着したエンジンの試験は行わなかった。代わりに、改良品を付けた場合のPM値をシミュレーションし、それで得た推定値を試験結果に使った。
この不正を専門家は次のように斬る。
専門家:まともな技術者なら、こんな賭けみたいなことはとてもできない。例えばトヨタ自動車であれば、開発部でエンジンを開発した後に品質保証部門の法規認証部がエンジン認証試験を行うため、そこで「NG」が宣告される。当然ながら開発のやり直しとなり、最悪の場合はラインオフが遅れる可能性もある。
こうしたリスクがあるにもかかわらず、豊田自動織機がこんな不正を行ったのは、PM値が規制を超えるのに気づいたのが、エンジン開発の終盤だったからではないか。1回の試験にかかる時間はせいぜい1時間半程度だが、燃料噴射装置を1回改良しただけで済むとは限らない。開発スケジュールを守れないと思い、ろくに確認もせずに推定値でOKとしたのだろう──。
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