Wednesday, March 8, 2023

日産、e-POWER車の価格を2026年までにエンジン車と同等に…脱CO2への電動パワートレイン本格的活用を加速 - レスポンス

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日産自動車は、e-POWER車の価格を3年後にエンジン車と同等にすると発表した。これによって、日産が2021年に発表し推進する中期経営計画の「日産アンビション2030」における電動車比率も高く修正されることになった。

日産は、すでに小型ハッチバック車の『ノート』をe-POWER専用車種としている。ガソリンエンジン車をなくすことで販売動向が心配されたが、ノートオーラを含めた販売台数で、エンジン車とハイブリッド車(HV)を持つトヨタ『ヤリス』のハッチバック車より多い台数を販売している。消費者の選択肢を幅広く持つことをよしとするメーカーがある一方、消費者の多数はHVを望むようになった時代に、ノートでの英断は販売実績としても裏付けられた。

さらに、今回の発表でe-POWER車の価格がエンジン車と同等となれば、もはやエンジン車を残す理由は限られる。日本はもちろん世界的にもエンジン車販売を禁止する動きのなかで、日産の優位性が高まることになるともいえるだろう。

◆X‐in‐1で電動車開発や生産を合理化

では、日産はどのようにしてe-POWER車をエンジン車と同等の価格にしていくのか?

一つは、X‐in‐1の取り組みだ。これは、電気自動車(EV)との共通部品を増やし、また電気系統を一体化した設計とすることで、部品の共通化と、生産での工数の削減を通じ、EVとe-POWERを含めた電動車開発や生産を合理化する。

初代『リーフ』が発売された当時、またノートに初のe-POWERが搭載された当時は、モーター、インバーター(制御)、減速機(歯車)がそれぞれ別体で存在し、それを組み立てていた。これによって、強電系統とよばれる高電圧の配線も数本必要になっていた。その分、車載に際し空間のゆとりが必要だった。

それらを一体システムとして成り立たせることで、個々の部品を組みたてる際に必要だった空間を減らし、同時に外側のケースを一体構造とすることで、より小型のシステムとなり車載性が高まる。このことは、ことにエンジンも必要とするe-POWERでパッケージング上の利点になる。EVであっても、モーター駆動系を前でも後ろでも自在に車載し、客室や荷室空間の拡大に役立つ。さらに、システムが一体構造であることによって部品個々の振動や騒音を抑えることもできる。つまり、単に合理化し小型化するだけでなく、電動車両としての快適な乗り心地にも寄与することになる。

日産、e-POWER車の価格を2026年までにエンジン車と同等に…脱CO2への電動パワートレイン本格的活用を加速日産、e-POWER車の価格を2026年までにエンジン車と同等に…脱CO2への電動パワートレイン本格的活用を加速

すでに日産は、三菱自動車工業との共同開発による軽EVの『サクラ』によって、軽自動車であってもEVであれば上級車種のような快適さと走行性能が実現することを経験している。同じことは、先々のノートや、リーフなどの進化において、車格上の快適さや性能を実現できる潜在性を持つことを意味し、他社のHVやエンジン車と比べ商品性に格段の差をつけられることを予感させる。

エンジン車販売への規制が強化されるなか、エンジン車販売が禁止されても不安のない先行きをすでに手に入れることになるのである。

日産の経営の柱には、電動化のほかにスポーツカーの存在もある。エンジン車として残るのは『GT‐R』や『フェアレディZ』といったスポーツカーのみとなってもおかしくない。だが、それらも、エンジン車と同等の価格で、それ以上の性能を実現できるとなれば、電動化されたスポーツカーという価値も生まれるかもしれない。

◆電動化の強み…モーターやバッテリーの戦略

電動化の強みを、日産は改めて次のように説明する。

EVを基盤技術としたe-POWERは、モーターのみの駆動によって走行する。モーターは、エンジンの100分1の緻密さで出力制御ができるとされ、その精緻さは数ms(マイクロ・セカンド=百万分の1秒)であるという。この素早い応答を活用し、日産はモーターの加減速に予測制御(フィード・フォワード)と修正制御(フィード・バック)を組み合わせ、ドライブシャフトによるねじれが原因となる振動を抑え、アクセルペダルの踏みはじめから滑らかな加速を実現している。これにより、乗員の車酔いを防ぐとともに、砂地や雪道での前進を的確に実現し、不安のない運転をもたらす。たとえEVといえども、こうしたモーター特性を熟知した制御が不十分であれば、路面状況が不安定な場面でモーター駆動のよさを活かしきれなくなる。

前後をモーター駆動する4輪駆動のe-4ORCEにおいても、日産は4輪それぞれの駆動力を最大に活かしながら、適切なブレーキ制御を加えることで、安定し、かつ的確な旋回性能を実現できる。その様子は、EVの『アリア』や、e-POWERの『エクストレイル』を運転してみれば、ハンドル操作の通りに進路をなぞる運転を体感することができる。

世界的にも電動化への動きが急速に高まりつつあるなか、エンジン車と同等の価格をe-POWER車が実現することにより、必要となるのはより多くのモーターでありリチウムイオンバッテリーだ。すでに、資源の確保や、材料価格の上昇が懸念されだしている。

それに対しても日産は明確な戦略をすでに持っている。まずモーターについては、永久磁石式同期モーターで必要とされる、ネオジムやディスプロシウムといった希土類元素を減らしながら性能を確保する設計がはじまっている。また、それら希土類元素以外の元素を使い、性能を維持する研究も行っているとのことだ。

さらに、アリアで採用した電磁石を使う巻き線式モーターも併用し、商品展開していくことで、適材適所のモーター選択が可能になる。巻き線式モーターは、アウディ『e-tron』やメルセデスベンツでも採用しており、欧州の高速域での利用に適合するとの見方がある。電気を止めれば磁界が消え、抵抗のなくなる巻き線式モーターは、巡行領域での効率向上に役立ち、磁界がないことによる振動も消え、より上質な乗り心地をもたらす。大柄な車体寸法となるプレミアム車格に向いているだろう。

バッテリーに関しては、中国で先んじた燐酸鉄のリチウムイオンバッテリーの開発をすでに日産は終えているとのことだ。あとは、市場動向も含め、どの車種に採用していくかという段階にあるらしい。

そのリチウムイオンバッテリーについては、リサイクル(資源化)の研究を進めながら、その前にリユース(再利用)が望まれる。廃車後のリチウムイオンバッテリーは、まだ60~70%の容量を残すからだ。それについて日産は、初代リーフ発売前にフォーアールエナジー社を設立し、事業を本格化し、中古リチウムイオンバッテリー活用の実績を持つ。世界的にも、他に例のない取り組みだ。まもなく、ノートではじまったe-POWERのリチウムイオンバッテリーの回収もはじまるとのことで、それらは再生可能エネルギー(風力や太陽光発電)のバックアップ蓄電に向いているという。

つまりクルマの電動化は、単に車両としての脱二酸化炭素にとどまらず、社会活動の枠組み全体に脱二酸化炭素を広げる要素の一つに発展していくのである。

以上のような全方位的な脱二酸化炭素へのEVやe-POWERの本格的活用は、日産にしかできないでいる。他は、多くがまだ実証実験段階だ。これも、13年前にあえてEVを市販した成果であり、過去13年間の苦労と知見が、いま花咲こうとしているのだ。ことに、エンジン車の販売があと10年ほどで禁止される可能性を高めている今日、それを実現する手立てを、日産は実用化可能な技術で明らかにしたのである。

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