[18日 ロイター] - トヨタ自動車の佐藤恒治次期社長は18日、液体水素を燃料としたエンジン車で5月下旬開催の富士24時間レースに参戦する方針を明らかにした。本来はこの日の鈴鹿スーパー耐久レースで走る予定だったが、事前のテスト走行中に車両火災が発生し、復旧が間に合わず欠場した。
液体水素によるエンジン車の本格的なレース参戦は世界初。佐藤氏は「この挑戦を揺らぐことなくしっかりと前に進め、次戦の富士24時間レースで再び挑戦できるよう準備を進める」と語った。
世界的に脱炭素の流れが強まる中、電気自動車を含め多様な選択肢を用意する方針を掲げるトヨタは2021年、水素エンジンの技術開発方針を発表した。レースで試しながら開発を進め、内燃機関を残そうとしている。当初は気体水素で、昨年3月に航続距離がより長い液体水素を燃料に使う車両開発を始めたことを公表した。
水素エンジン車の実用化の時期や販売目標は非公表だが、佐藤氏は「21年までは選択肢のメニューにすら載っていなかったが、今では『何年に何台売る気なのか』という質問を頂けるレベルの速さで(開発が)進んでいる」と説明。「具体的な事業目標より、今の段階は確実に選択肢にする、インフラも含めた総合的な取り組みを多くのパートナーと進める。足元のそういう努力にまず注力すべき」と述べた。
トヨタによると、8日に起きた火災の原因は車両の振動で配管の結合部が緩み、水素が漏れ引火。液体水素そのものが直接の原因ではなく、気体水素でも起こり得るという。ドライバーにけがはなく、安全機能が作動し、大きな延焼もなかった。ただ、車両の復旧が間に合わないとして鈴鹿でのレース出場は断念した。
トヨタでモータースポーツ活動を統括する高橋智也・GRカンパニープレジデントは15日の火災に関する説明会で、設計しておいた安全機能が正しく作動したことが実証できたとして「非常に前向きにとらえている」と説明。豊田章男社長からも「絶対に水素エンジン車の開発は止めない」と告げられたという。
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