日産自動車は2023年7月19日、横浜工場(横浜市神奈川区)でのエンジン生産台数が累計4000万基を突破したと発表した。同工場は1935年にエンジンの生産を開始し、1976年に1000万基、1986年に2000万基、1997年には3000万基を達成した。
横浜工場では現在、可変圧縮比エンジン「VCターボ」、SUV向けのV型8気筒エンジン、「GT-R」専用エンジン、ミニバン向けの直列4気筒エンジンに加えて、シリーズハイブリッドシステム「e-POWER」向けの駆動用モーター2機種を生産している。モーターの生産は2024年末までに累計200万台に届く見通しだ。
エンジン生産の歴史が長いが、2022年度は横浜工場のパワートレイン生産台数の4割が駆動用モーターだった。また、横浜工場では2024年までに全固体電池のパイロット生産ラインを設置するなど、カーボンニュートラル達成に向けて電動化が進む中でも重要な役割を果たしていく。
今後違うものを作るとしても変わらない強み
横浜工場 工場長の和田民世氏は「電動パワートレインが4割という比率は当面続く。長期ビジョンが立てられている2030年に向けては、全固体電池などカーボンニュートラルに貢献する新たな技術や、それを量産するための開発に工場のリソースやアセットを振り替えていきたい。比率としてはエンジンに携わる人員が多いが、今の強みを生かしながら新たに強みとなることを学んでもらうことを計画しており、一部は既に始まっている」とコメントした。
横浜工場の従業員の67%となる2200人が製造に携わるのに対し、生産技術開発は29%の1000人で、さらにこのうち200人が新たな技術や工法、材料の開発に携わるという体制だ。生産技術開発と製造の連携により、これまでにもさまざまな先進技術の量産や海外展開を実現してきた。この体制の特徴を今後も生かす考えだ。
工場長の和田氏は「作り始める前に製品そのものを理解することから始めて、試作にも参画して新しい製品の作り方を習得してきたバックグラウンドがある。今後、全く違うものを作るとしても、こうしたバックグラウンドが生きる部分がある。例えば、触媒で求められる粉ものをハンドリングするプロセスは電池にも生かせる強みだ(米国のマスキー法=大気清浄法改正法への対応で1977年に横浜工場で触媒の内製を開始)。バックグラウンドが生かせないところは社内外で新しく学びながら、どうレシピを決めるかというところから関わっていく。全固体電池も、社内の総合研究所がミニプラントでレシピを作り込んでいるところに横浜工場の従業員も多数参加している」と述べ、電動化が進む中での役割の変化に対応していくことを語った。
横浜工場発で海外生産される可変圧縮比エンジン
可変圧縮比エンジンは横浜工場がグローバルマザー工場となり米国と中国でも生産。また、e-POWERの発電用となる排気量1.5l(リットル)の同エンジンは中国でも生産している。可変圧縮比のグローバル累計生産実績は、2023年6月までに排気量2.0lのタイプが33.2万基、排気量1.5lのタイプが53.3万基に達した。
可変圧縮比エンジンには、既存のエンジンと異なる点が幾つもある。既存のエンジンがピストンとコネクティングロッド、クランクシャフトで構成されているのに対し、可変圧縮比エンジンはピストンからアッパーリンク、ロアリンク、クランクシャフト、コントロールリンク、コントロールシャフト、アクチュエーターリンク、VCRアクチュエーターへとつながる。部品点数も増えている。
ロアリンクやクランクピンへの入力荷重は従来のエンジンの1.9倍となり、高強度かつ高精度な部品の製造技術が不可欠だ。それを組み立てる技術に加えて、圧縮比の変更によってピストンの摺動位置が変わることに対応したフリクション低減と耐久性向上も求められる。また、部品点数が多く複雑な構造であるため、品質管理も必要だ。
これらの課題をクリアした上で、メルセデス・ベンツやサーブが製品化を断念した可変圧縮比エンジンを量産し、海外にも展開してきた。マザー工場としての生産技術の強みを、電動化に求められるさまざまな領域で生かしていく。
からの記事と詳細 ( エンジン生産4000万基の日産横浜工場は電動化時代をどう生きるか - MONOist )
https://ift.tt/3VaTxeh
0 Comments:
Post a Comment