ロケットエンジンには、大きく分けて固体燃料式と液体燃料式とがある。固体燃料式は構造が単純で低コストという利点があるものの、燃料は爆発物なので扱いが難しく、一度点火した後の推力の調整が困難という欠点がある。液体燃料式は、推力が大きく調整も可能ながら、複雑で製造や管理のコストが高いという難点がある。
その2つのいいとこ取りをしたのが、ハイブリッドエンジンだ。構造が簡単なうえに燃料は普通のプラスティックなので爆発の危険性がなく、推力調整も可能。理想的なエンジンなので世界中で開発が進められているが、推力が小さいという欠点があった。そこでMJOLNIR SPACEWORKSは、ハイブリッドエンジン研究者の第一人者である北海道大学永田晴紀教授と共同で推力の大きなハイブリッドエンジンを開発した。このエンジンと組み合わせてさらに効率的なロケットを実現する液体推進剤用の「無溶接タンク」も同時に開発し、こちらはすでに販売を行っている。
MJOLNIR SPACEWORKSのエンジンの燃料に使われているのはポリバケツやビールケースなどの材料にもなっているごく普通のプラスティックHDPE(高密度ポリエチレン)。軽くて安価で取り扱いも簡単と、いいことづくめ。プラスティックを燃やすと有害物質が出るのではと心配されるかもしれないが、ポリエチレンは完全燃焼すれば二酸化炭素と水しか出ない。通常の固体ロケット燃料よりもずっとエコでなのだ。
JAXAのH3やイプシロンが相次ぎ失敗し、日本のロケット開発はもうダメなのかと意気消沈する宇宙ファンも多いことだろうが、日本にはこんな優れた技術がまだ出番を待っている。MJOLNIR SPACEWORKSは、「かつて日本は自動車の大量生産で世界一になりました。次はロケットの大量生産でも世界一を目指します」と心意気を示している。
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