Thursday, July 6, 2023

トヨタの液体水素エンジン大成功も市販化はまずは気体で - ITpro

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 2023年5月、トヨタ自動車の液体水素エンジン車が24時間耐久レースでデビューした。液体水素を燃料とした車両でのレース参戦は「世界初」(同社)だ。「#32 ORC ROOKIE GR Corolla H2 Concept」(水素エンジンカローラ)は予定通り完走した。

トヨタの液体水素エンジン車

トヨタの液体水素エンジン車

富士スピードウェイで開催された「ENEOS スーパー耐久シリーズ2023」の第2戦「NAPAC 富士SUPER TEC 24時間レース」を完走した。(写真:日経クロステック)

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 トヨタは1年前の富士スピードウェイ(静岡県小山町)でのレース会場で、いかにも重そうな液体水素タンクシステムを搭載した試作車を展示していた。当時の技術担当者は、モリゾウこと当時社長の豊田章男氏から液体水素エンジン車による早期レース参戦を切望されていると苦笑いしていた。

 液体水素タンク仕様車でのレース参戦は容易ではなく、1年以内には無理だろうと筆者は感じていた。詳しくは後述するが、「ボイルオフ」による給水素の困難さや液体水素の燃料ポンプ設計、重量増加など課題が多い。完璧ではないが対策を施し、参戦にこぎつけたチャレンジ魂には敬服したい。すべては市販化への実証試験として必須だったという。

 果たして、液体水素エンジン車は本当に市販化できるのか。可能性と課題の両面から明らかにする。

液体水素のうれしさ

 液体水素を燃料に使ううれしさは、1回の給水素で走行できる距離(航続距離)を延長できることだ。同じタンク内容積ならば、高圧70MPaの水素ガス仕様に比べ、液体水素はエネルギー密度が高いために約2倍の航続距離を稼げる試算だ。

 今回のレース車両は、液体水素の残量を検知する精度のばらつきを考慮し、安全をみて1.7倍として給水素のタイミングを設定したようだ。液体水素タンクでは、-253℃以下に保持するために魔法瓶のように断熱構造は必要だが、タンクの内圧は数百kPaとあまり高圧にならないのでタンク自体は小型化できるし、搭載スペースに合わせて異形化も可能だ。今回のタンク容量は148Lである。

 また、給水素ステーションは岩谷産業が開発したコンパクトな移動式となり、ピット内での充填が可能となった。水素ガスの場合に比べ昇圧用の圧縮機や水素を冷却するプレクーラーなどが不要。加えて複数台の高圧水素ガスのタンクローリーも不要で、1台の液体水素タンクローリーだけで十分となりステーション設備は、水素ガスを使っていた2022年と比べて約1/4にできたという。ただ、ボイルオフした水素ガスを大気に放出する際の熱交換器は大き過ぎると思うし、そもそも無駄である。

 高圧水素ガスタンク仕様に対して今回の液体水素タンク仕様でのエンジン燃焼の違いを、トヨタGAZOO Racing Company GRパワトレ開発部主査の小川輝氏に話を聞いた。液体水素を使うシステムの課題もはっきりしてきた。

水素エンジンの開発を担当する小川輝氏

水素エンジンの開発を担当する小川輝氏

GAZOO Racing Companyの所属だが、「トヨタ本社や東富士研究所の研究開発部門など複数部署を兼務して水素エンジンの開発を進めている」という。(写真:日経クロステック)

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