Friday, July 21, 2023

日産、エンジン生産累計4000万基を突破した横浜工場を公開 全固体電池のパイロットラインの準備は計画通り進む - Car Watch

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横浜工場で生産される可変圧縮機構を採用した「VCターボ」エンジン

 日産自動車は7月19日、横浜工場のエンジン生産が6月の実績をもって累計4000万基を突破したと発表。これに合わせ、横浜工場の概要や同工場で生産している世界初の量産型可変圧縮比エンジン「VCターボ」についてのプレゼンテーションを実施した。

 横浜工場は日産創業の地として、1933年の創業開始から2年後となる1935年よりエンジン生産をスタート。1976年に1000万基、1986年に2000万基、1997年には3000万基を、さらに日産の創業90周年を迎える2023年に累計4000万基の生産を達成した。

 横浜工場では、乗用車に初めて搭載したターボエンジン「L20ET」(1979年)やV型6気筒エンジンの「VG」(1983年)など日産の歴史に残るさまざまなエンジンを生産してきた。現在は「GT-R」に搭載する熟練の職人が手で組み上げる「VR38DETT」エンジンを2007年から生産するとともに、2017年からは可変圧縮機構を採用した「VCターボ」エンジンの量産を開始している。

 また、同工場は社会環境の変化により役割を変化させており、2010年に発売したBEV(バッテリ電気自動車)「リーフ」の発売以降、駆動用モーターの生産を開始。現在はBEV向けに加えて、「ノート」などに採用するe-POWER用モーターの生産も行なっており、2022年度は横浜工場における生産台数のうち、約4割がモーターが占めるまでに至っている。また、2024年までに全固体電池の技術開発を行なうパイロットラインを横浜工場内に設置する予定となっている。

新たな電動化戦略を支える事業所として量産技術開発工場への転換を一層加速

横浜工場長の和田民世氏

 プレゼンテーションで登壇した横浜工場長の和田民世氏は、会社設立から90周年を迎えるタイミングでエンジンの累計生産台数が4000万基を達成できたことを誇らしく思うと語るとともに、横浜工場の概要について紹介。

 横浜工場の敷地面積は約54万m 2 で、エンジン、電動車のモーター、そしてサスペンションユニットなどの生産を行なっている。モーターについては2010年から生産を開始しており、2024年度には生産累計200万台を達成する見込みだという。和田氏はこの横浜工場の特徴について生産技術開発部門と共存していることと語り、新技術の開発とその量産、適用を行なう集積基地がこの横浜工場となる。

 横浜工場で生産しているユニットは、世界初となる可変圧縮機構を採用したVCターボの「KR」エンジンをはじめ、高出力のV型8気筒「VK」エンジン、GT-Rに搭載されるV型6気筒「VR」エンジン、ミドルクラスの車両に幅広く採用されてきた「MR」エンジンなど多岐にわたり、モーターではBEVやe-POWER車に搭載される「EM47」型、「EM57」型の生産を行なっているという。

 和田氏は「私たち横浜工場は日産自動車創業の地として、“他のやらぬことをやる”という日産のDNAを継承しながら本日まで進化してまいりました。過去に目を向けますと、創業者の鮎川義介氏が日本で産業を起こす、社会に貢献するという強い思いで日本初の自動車一貫生産工場として操業を開始いたしました。そして現在、パワートレーンの専門工場として社会に貢献する新たな技術開発とその量産の実現、そしてそれを支える人づくりへの努力を創業以来、絶やさず維持しております。このDNAを元に、全固体電池のパイロットラインをはじめとする新たな領域への挑戦をとどまることなく進めております」と述べるとともに、1976年に1000万基を達成して以降、10年刻みでマイルストーンを刻みつつ1990年代の終わりからグローバル化が進んだことで横浜工場は役割を変えながら、新機種の量産化という面でグローバルマザー工場としての役割を果たして進化を続けてきたと報告。

 4000万基を達成できたことについては「累計4000万基の生産台数を達成できたのは、われわれの作り出してきた商品をお客さまが受け入れてくれたからと考えております。それは私たちの先人たちが、社会環境の変化の中でその時代時代の社会のニーズに応える技術革新を生み出すことに、努力を絶やさず取り組んできた成果だと考えております。日本初の乗用車の量産の実現から始まって、その後、社会的には交通インフラの整備で経済発展するとともに、同時に社会課題となった環境汚染や資源枯渇の解決に貢献するための数多くの日本発、世界初の新技術を採用したエンジンを量産するための材料や生産方法などの設備を開発し、また設備の自動化やフレキシブル化などの生産方式の開発と共に、これらを支える人づくりを脈々とやり続けてまいりました」。

「1970年代には当時大変大きな環境規制であったマスキー法時代に、排気を浄化するための触媒を開発して立ち上げ、量産化するということをやってまいりました。また軽量化を図るためにアルミ溶接構造のサスペンション・メンバーといったものも開発、量産化を行なってまいりました。エンジンで見ますと燃費性能向上のためのシリンダーボア内面の鏡面仕上げといった、さまざまな課題解決に答えるための製品作りに貢献してまいりました。このような取り組みを持続できるDNA、風土、カルチャーがここ横浜工場には根付いております。創業以来、本当にいろんなことをやってきておりますので多種多様な工法を有しております。これはわれわれの本当に強みだと思っています。生産数量そのものは減ってきたり、中には増えてきたり、色々ありますから、そういった変動がありながらも工法を維持し続けて、多様なコンピテンシーを持続するための技術、技能をしっかりつないでいく人づくり、これを絶やさずにやる。そして、そこに常に新しいものを開発し続ける技術開発部隊と共存する。これらが基盤となって、新たなものに柔軟に取り組める風土、カルチャーを構築しているということが言えると思います」とコメントした。

 なお、和田氏は横浜工場の今後についても触れ、エンジンをはじめとして既存の電動車用部品やサスペンションの量産を持続していくことと並行し、新たな電動化戦略を支える事業所として技術開発機能を有した量産技術開発工場への転換を一層加速していくことを発表。

 長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」の進捗でアナウンスされた全固体電池については「パイロットラインの準備は計画通り進んでおります」と語るとともに、「これ以外にも電動化で必須となる軽量化への貢献として、アルミ車体鋳物やサスペンションの開発、また高効率化やコスト最適化を図るためのモーターや磁石などの量産技術開発、さらにカーボンニュートラルへの貢献を図るための発電ユニットなどの技術開発などを目指し、われわれ横浜工場が持つ多種多様なコンピテンシーをフルに活用していく計画ですので、どうぞ横浜工場の未来にご期待ください」と述べプレゼンテーションを締めくくった。

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